お金

肉のハナマサ、スーパー玉出。東西の2大“ローカルスーパー”が異例の提携。大量閉店、暴力団関与…「挫折からの再起の行方」は

旧体制下で相次いだ不祥事「スーパー玉出」

 スーパー玉出は1978年創業。1992年に法人化した。同社は「日本一の安売王」を称し、看板企画である「1円セール」や24時間営業を実施。最盛期には大阪府南部を中心に食品スーパー60店舗弱、不動産業、カラオケ、ボウリング場を幅広く展開していた。  同社は創業社長が持つインパクトの強さやパチンコ店を彷彿させるネオン管を多用した内外装、道頓堀への広告出稿もあり、全国的な知名度を誇っていたが、少なくとも1990年代後半の法人化直後から外国人労働者の不法就労や裏社会との結び付きが露呈しており、創業社長を始めとする経営幹部が幾度となく逮捕となるなど、派手な店舗とは裏腹にダーティーなイメージがつきまとっていた。  また、同社が特徴としていた価格政策に関しても特売偏重、イメージ先行型といえるものであり、生鮮惣菜に関しては価格相応、グロサリーに関しては競合他社と比べ総じて割高となっていた。大阪市中心部の繁華街・歓楽街への店舗展開に関しても、同業大手の店舗網拡大により、決して強みといえるものではなくなっており、2013年以降新規出店を凍結し、年1~2店舗程度の不採算店舗の整理を進めていた。
スーパー玉出日本橋店

旧体制時代の「スーパー玉出日本橋店」(大阪市中央区)。新体制による法令遵守意識向上の取組みで店舗デザインの一部が変更となった

 2018年7月には新会社「フライフィッシュ」に運営を移行し、従来からの激安イメージを踏襲しつつ、旧体制下で欠落していた法令遵守意識の向上を始めとする改革を推進

パチンコ店跡、老朽化など物件特有の課題も

 店舗自体に関しても、スマホ決済導入やインバウンド対応、公式Instagram/TikTokを始めとするSNS発信強化、ブランドを活かしたオリジナルグッズの開発、高級食品スーパー「F.Fマルシェ」事業に取組んだが、経営改善の遅れやコロナ禍を背景に、新体制後20店舗超を閉鎖、2024年6月20日には兵庫県内から完全撤退した。
スーパー玉出尼崎店

大阪府外唯一の店舗だった「スーパー玉出尼崎店」(兵庫県尼崎市)。ダイエーのディスカウント「トポス」跡を活かした60年近い歴史誇る店舗だった

 玉出は全国的な知名度に反して、看板商品は決して多くない。以前からの名物であった惣菜は物価高騰が進む昨今においても、大阪では競合他社を寄せ付けない低価格を維持。玉出のロゴを全面にあしらったPB商品を新たに発売するなど、玉出ならではの価値向上に取組んでいるが、これらの取組みは発展途上といえる。  また、玉出は旧体制下における店舗網拡大の過程で、レジャービルやパチンコ店跡といった異業種にルーツをもつ物件、マンションのエレベーターが売場内にある物件、半世紀超の老朽物件といった特殊な物件を多数擁しており、物件特有の課題も顕著となっていた。  既出の通り、競合各社は玉出の地盤である大阪市中心部での店舗拡大に加え、「ダイエーCoDeli」「ライフMiniel」といった新業態の開発を進めており、玉出というブランドに依存しない価格面・商品面での「差別化の鍵」の確保が急務だった
天下茶屋丼

西成あいりん地区限定で販売されている「天下茶屋丼」(2016年11月当時)。玉出の弁当惣菜のなかでも最安級の価格設定だ

次のページ
玉出は西成周辺に店舗集約
1
2
3
4
都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitter:@toshouken

記事一覧へ
おすすめ記事