老舗スーパーが参入し“グランピング”業界の牽引役に。カギは「サウナ」と「ペットツーリズム」
都会の日常から離れ、自然の中で非日常感や贅沢感を味わえるグランピング。キャンプ道具の準備や片付けは不要。気軽にアウトドア体験できることから、全国各地にグランピング施設が増えている。
京都府北部の京丹後市に本社を置く株式会社にしがきは、1950年創業。地元に根差したスーパーマーケット「にしがき」を祖業とし、リハビリデイサービス施設やイタリアン、和食のレストラン運営など、さまざまな事業を展開してきた。
同社が観光産業に参入したのは1989年。日本三景のひとつ「天橋立」にリゾートマンションや別荘地を建設し、その分譲を始めたのがきっかけになっている。
にしがき2代目の父が立ち上げたリゾート事業の拡大を考えるなかで、当時20代だった西垣さんは、ある知人の経営者からの助言が印象に残っていると語る。
「スーパーは京丹後や宮津といった地域内でお金が回る内需型なのに対して、リゾート事業は地域外の京阪神エリアからお金を引っ張ってくる外需型で、小さい単位で見れば“外貨を稼ぐ”ことができるのを教わりました。『外からお金が流れてくる仕組みを作れば地域貢献につながる』ことを知人の経営者から助言いただいたのは本当に目から鱗でした」
さらに、地域経済の発展や観光目的の需要を喚起できるリゾート施設の将来性も感じていたという。
「人口減少や高齢化に悩む地域を活性化させていくためには、滞在時間をいかに延ばして消費を促進できるかが肝になります。日帰りの場合と比べて、宿やホテルに1泊するとお土産を購入する確率が上がるという統計データもあるように、滞在時間に比例して売上向上に寄与できるリゾート施設は、スーパーマーケットとは異なるビジネスの魅力があると考えていました」
リゾートマンションや別荘地の分譲および不動産事業から、宿泊事業に乗り出したのは2011年だった。14名のオーナーで別荘をシェアする「プール付ヴィラ」の施設を開業したところ、関西地域を中心に話題となり、会員以外の一般客の宿泊も取れるように変えていったのが今のグランピング事業の原型になっているそうだ。
「2016年ごろに、“グランピング”というキーワードが国内で持ち上げられるようになってきたのが転機でした。我々としてはグランピングの定義を広く捉え、プール付ヴィラも1つのモデルとして事業を考えていました。そんななか、ポーランドのメーカー『Fdomes』のグランピング用テントと出会い、2018年に『グランドーム京都天橋立』をオープンさせたのが、ドーム型テントのグランピングの先駆けになっています」
もとは「グラマラス(魅惑的)×キャンピング」の造語として生まれたグランピングだが、現在はヴィラやコテージ、ドームテント、ログハウスなど宿泊タイプが細分化されており、サウナやドッグラン、キャンプファイヤーといった設備の多様化も進んでいる。こうしたなか、日本最大級のグランピング施設を運営・企画しているのがマリントピアリゾートだ。
これまでに全国で300棟以上のグランピング施設を手がけているほか、1棟貸しの別荘を複数名でシェアする会員制リゾート事業を行うなど、市場の牽引役としてビジネスを展開している。今回は、マリントピアリゾートの母体となる株式会社にしがき 代表取締役の西垣俊平さんに、グランピングにおけるトレンドの変化や事業の将来性について話を聞いた。
“外貨”を獲得して地域貢献
リゾート事業に見出した可能性
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている
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