恋愛・結婚

子供の塾を勝手に決めてきたパートナーへの怒り。しかし「相談できない状態」を作ったのは自分だった

相談は、最初から答えが決まっているとは限らない

 僕は、続けて「Aさんのパートナーがご自分のニーズをAさんに教えてくれないのは、なぜだと思いますか?」と質問してみました。 「Aさんのパートナーは、子どもの塾のことで相談したかったポイントを言語化できているけれど、Aさんに話したくなかったのでしょうか? そもそも相談したいこと自体をうまく言語化できていないとか、相談のポイントが何なのかをご自身でもわかっていなかったという可能性はありませんか?」  Aさんは、ハッとした様子で答えてくれました。 「そうか……私はパートナーから相談してもらえなかったことを『自分を軽んじている』とか『自分を信頼してくれていないからだ』とばかり思い込んでいましたが、確かにそういう時だけではないですよね」  通常、悩みや相談したいことなどは、何でも言語化されていたり、論点整理できているようなことばかりではありません。 「相手は何を伝えようとしているのか、こういうことだろうか?」と相手の意図やニーズを想像しながらコミュニケーションを重ねることで、相手自身でさえも気づいていなかったことが明らかになってくる場合も多々あります。  そうしたプロセスにこそ、相手の悩みやニーズを知り、ケアをする機会へとつながるヒントが潜んでいるのです。

パートナーが相談できない状況に追い込んでいたのはAさん自身だった

 後日、Aさんは、パートナーとのやり取りについて次のように話してくれました。 「最近特に仕事が忙しくて自分の時間を満足に取れていなかったので、私はパートナーとの雑談時間を極力削ろうとしていました。でも、それは、自分から『相手のニーズや価値観、状況などを知る貴重な機会』を放棄することに他ならなかったんです。  結局、私は、パートナーが一人で子どもの塾のことを決めざるをえない状況に自分で追い込んでおきながら、それを自分勝手にパートナーのせいにして、あまつさえ自分が被害者ぶってパートナーを責めていたんです……つくづく自分が嫌になりました」  そしてAさんは一呼吸置いて話を続けてくれました。 「でも、勇気を振り絞って、えいなかさんやGADHAの仲間に相談したり、弱音を吐いたりしているうちに、どうにかこうにか自分の気持ちの整理もできてきました。  おかげさまで、最近はパートナーとの雑談を意識するようになり、自分の感じていることや状況などを、気軽に、日常的に相手と共有していくことが少しずつできるようになってきました。  すると、相手も普段どんなことを感じているのか、大切にしているのかといった話もできるようになり、子どもの塾のことに限らず、パートナーがどうしてそう考えたり行動したりしているのか、その背景が自分にも垣間見えるようになってきました。  そのおかげで、自分の認識を少しずつ修正したり、アップデートできるようになり、ケンカすることがだんだん減ってきたように思います。えいなかさんやGADHAの仲間に思い切って相談してみて、本当に良かったです」  Aさんのどこか晴れ晴れした表情が印象的でした。
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相手があなたを理解する姿勢がなければ、関係を終了してもいい
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DV・モラハラなど、人を傷つけておきながら自分は悪くないと考える「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティ「GADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。加害者としての自覚を持ってカウンセリングを受け、自身もさまざまな関連知識を学習し、妻との気遣いあえる関係を再構築した。現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。大切な人を大切にする方法は学べる、人は変われると信じています。賛同下さる方は、ぜひGADHAの当事者会やプログラムにご参加ください。ツイッター:えいなか

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