更新日:2024年12月04日 15:49
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「般若心経の刺青」を入れた女性が歩んだ“過酷すぎる”人生「普通の生活に戻れないことはわかっている」

「まごみさんの機転」によって継父は逮捕

まごみさん

母親の実家に避難するも…

 まごみさんは一時期、母親の実家へ「避難」させられていたものの、継父によって連れ戻されたのだという。 「あれほど凶暴な継父は祖父母の自宅に来るなり土下座をして、私のことを『引き取らせてほしい』と言ったんです。家庭内に“おもちゃ”がない状況が嫌だったのでしょうね。連れ戻されてからも、私はこれまで通り性的な虐待を受けました」  そんな生活に終止符を打ったのは、他ならぬまごみさん自身だ。 「私が中学1年生だったある日、酔った継父が『俺に隠し事をしているだろう、お前ら全員裸になれ』と怒鳴り散らし始めました。とにかく逃げ出す口実を考えて、『レンタルビデオの延滞料金が発生する頃だから返却させてほしい』と懇願しました。なんとか説き伏せ、飲酒をしていない母が運転手、私と妹(継父の実子)が同行する形で落ち着きました。ガラケーで継父の所持していた違法薬物をいくつも撮影していた私は、母に『これから警察署へ行くか、ここで全員死ぬか、選んで』と迫ったのです」  中学生だったまごみさんの機転によって継父は逮捕され、一家は決別することができた。

刺青を入れた理由も「継父」にあった

まごみさん

地元の環境が「息苦しかった」という

 まごみさんが刺青を入れ始めたのは、7年ほど前、上京したタイミングと重なる。その理由を端的に言えば、「継父に見つかるのではないかという恐怖から」だという。 「私は山口県で生まれ育ったのですが、地元の子の動向をみんなが把握しているようなこじんまりした地域で、息苦しさを感じていました。くわえて、継父は“おもちゃ”だった私に執着して実家から連れ戻したような人です。どこかで『また探しにくるのではないか』という思いがありました。姿を変えることで、ほんの少しだけ安心できたんです。体重も20キロくらい落として、耳の裏に刺青を入れたのを皮切りに腕、手、太もも、スネ、首の真ん中などにも彫りました」   ここで全員死ぬか――中学1年生にして母親にそう迫ったまごみさんの胆力には驚かされるが、事実、彼女は死すら恐れていなかった。希死念慮について、こう振り返る。 「しばらくはリストカットなども繰り返していました。でも、刺青を入れてそれを眺めていると、不思議と気持ちが落ち着いたんです。継父と過ごしていた時期に比べれば『死にたい』という気持ちは薄くなっていたものの、やはり波はありました。一番大きな出来事は、およそ3年前、もうすべてどうでもよくなって、住んでいたマンションの6階から私は飛び降りました。確実に死ねるように、後ろ向きで飛んだんです」
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「生きたい」と思い、写経に打ち込むように
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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