「般若心経の刺青」を入れた女性が歩んだ“過酷すぎる”人生「普通の生活に戻れないことはわかっている」
明るい髪の色と、腕に規則正しく彫られた漢字の刺青。その華やいだ笑顔で会釈をされると、なぜかこちらが安心した。現在はBarの従業員をしている、まごみさんだ。
名前の由来を聞くと、「私、生ゴミみたいなもんなんで、『な』を取って『まごみ』です」とおどけた自己紹介で和ませる。だがそのユーモラスで自虐的な自己紹介の“つかみ”には、壮絶な人生の物語が隠されていた。
開口一番、まごみさんが語ったのは、こんな幼き日の記憶だ。
「私が小学校2年生くらいのときだと思います。部屋に血溜まりができていて、母が倒れていました。何度も殴られたであろう顔面は変形していました。当時、私は母と母方の親戚と一緒に暮らしていました。そこに扉を破壊して入ってきたのが、母の彼氏です。子どもだった私は押し入れに隠れるように言われ、諍いの音が消えて出てみると、さっきの光景だったのです」
シングルマザーとして育ててくれた母親は非常に魅力的な女性で、男性が絶えなかったという。だが、どの男性も暴力で解決しようとする傾向があった。
「あとから聞いた話では、母の彼氏は違法薬物の常用者で、その日も母が浮気をしているという妄想に取り憑かれて乗り込んできたようでした。病院でみた母は、ドラマでみるような包帯ぐるぐるの姿で、それまでと顔貌も大きく変わってしまいました」
ここまででも驚きを禁じ得ないが、さらに驚くのは事件の後日談だ。
「母は、事件があった年のうちにその彼氏と入籍しました。私は幼いながら、『絶対にやめたほうがいいよ』と切実に訴えましたが、母を止めることはできませんでした」
結局、まごみさんが中学校に入学するまでの間、婚姻生活は続いた。継父との地獄の日々をこう振り返る。
「身体に触る、口腔内に舌を深く突っ込まれるなどの性的いたずらから始まり、小学校高学年になると、性交の強要をされました。最初のうちは寝たふりをしてやり過ごしていたのですが、私が応じないことで継父の機嫌が悪くなり、母が殴られる頻度が増えたんです。母を守るためには、自分が継父を受け止めるしかないと思って過ごしていました。また、母と継父の間に子どもができると、継父は実子を猫可愛がりをするようになりました。クリスマスに突如正座をするように命じられ、プレゼントを渡す様子を見学させられたこともありました」
シングルマザーの母が彼氏に殴られて…
「プレゼントを渡す様子」を見学させられた
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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