更新日:2024年08月20日 11:41
お金

“ラーメン税”を外国人観光客から徴収すべき理由「年間100億円の税収は期待できる」

京都市は「宿泊税」で年間約100億円の税収が

こうしたインバウンドの負の波及効果「負の外部性」を取り除くために上手く活用されている施策の一つが、京都などの観光地に導入されている「宿泊税」だ。 この宿泊税、地方自治体が条例によって定められる法定外目的税に分類されており、たとえば京都市の場合、宿泊税で年間約100億円の税収がある。 この税収の使い道は、宿泊施設の充実化だけではない。宿泊者が増えること≒観光客が増えることによって、その地域において起きるさまざまな問題への対策に使われるのだ。 京都市のHPによると、宿泊税の税収は「市民・観光客双方にとって安心・安全な受入環境の整備や京都観光における、さらなる質・満足度の向上などに活用し、市民生活と調和した持続可能な観光の確立のため」に使われるという。 具体的には、修学旅行の受入環境整備、災害時等における市民・観光客等の安全対策、交通バリアフリー対策など地元住民にも恩恵をもたらす様々な整備に使われている。

「ラーメン税」を全国で導入するべき

そこで、この宿泊税と同様の効果を期待して、ラーメン店のオーバーツーリズム対策として提案したいのがラーメンの二重価格、いわば「ラーメン税」の導入だ。 外国人観光客が訪れる一部のラーメン店に日本人と外国人観光客で異なる価格、すなわち二重各区を導入するのである(ここからはラーメン税と呼ぶ)。 この税収の使い道は、宿泊税がそうであるように、ラーメン店そのものへの充実化だけでなく、外国語対応が難しいラーメン店のスタッフの語学コミュニケーション研修費、ラーメン店が密集している地域における観光ガイドの用意など、店舗以外にも求められるインバウンド向けのインフラ整備に使うのだ。 もちろん、ラーメン店前の道路の整備、地元客向けの座席の整備のほか、全国主要都市のラーメンマップアプリ、Google MapでのMEO(地図エンジン検索結果の最適化)やトリップアドバイザーなど口コミサイトの整備なども税収の使い道として考えられる。 つまり、ラーメン税は、ラーメン店だけではなく、地域住民の生活の質向上にも貢献するのだ。こうした施策に驚く人もいるかもしれないが、人気スポットに二重価格を持ち込むことは世界では極めてスタンダードな考えだ。 フランスのルーブル美術館、タイのワット・ポーはそれぞれの国の一大人気スポットだが、二重価格を導入している。具体的にはどちらも地元民の一部は無料、観光客はそれぞれ約3,700円と約1,250円となっている。 日本のラーメン店も、世界の観光スポットと同様のシステムで二重価格を導入すればよいのだ。これにより、オーバーツーリズムが解消し、日本人にとっての庶民食であるラーメンの文化が保たれるだろう。 筆者はこれまで、Amazonでさまざまな商品を販売してきており、マーケティング施策の一環として、商品価格を変動させることは当然のように行ってきた。 ネット通販はスーパーマーケットの野菜と同様に、ダイナミックプライシングが当然の業界である。そもそも、本来あらゆるサービスにおける価格は時期、ニーズによって変わるものであるはずだ。 そのため、ダイナミックプライシングや二重価格のように、値段が一律でない動きは今後さらに増えていくと考えられる。ただ、今回筆者が提案したラーメン税については、ホテルや航空券、サウナ、飲食店などのダイナミックプライシングとは異なる「税」だからこその利点がある。
次のページ
税収は少なく見積もっても100億円に
1
2
3
4
EC・D2Cコンサルタント、Amazon研究家、株式会社GROOVE CEO。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、新卒採用第1期生としてアマゾンジャパン合同会社に入社、出品サービス事業部にて2年間のトップセールス、同社大阪支社の立ち上げを経験。マーケティングマネージャーとしてAmazonスポンサープロダクト広告の立ち上げを経験。株式会社GROOVEおよび Amazon D2Cメーカーの株式会社AINEXTを創業。立ち上げ6年で2社合計年商50億円を達成。Youtubeチャンネル「たなけんのEC大学」を運営。紀州漆器(山家漆器店)など地方の伝統工芸の再生や、老舗刃物メーカー(貝印)のEC進出支援にも積極的に取り組む。幼少期からの鉄道好きの延長で月10日以上は日本全国を旅している

記事一覧へ
おすすめ記事