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日本人男性がタイで“無一文”に。タニヤのカラオケ店で月400万円を売り上げるオーナーになるまで

 記録的な円安や物価上昇など、日本が不況にあえぐなか、より良い条件を求めて海外就職や出稼ぎを考えている人も少なくないはずだ。
東野樹

東野樹さん(仮名・35歳)

 タイは日系企業が多く進出していることから、現地採用で働いている日本人も多い。とはいえ、“夜の店”のオーナーになった例は珍しい。13年前にバンコクを訪れ、その後は数奇なめぐり合わせでタニヤのカラオケ店を経営することとなった東野樹さん(仮名・35歳)に詳しい話を聞いた。

初のタイ旅行で無一文に「お金がないのなら、働いて稼ぐしかない」

 東野さんが初めてタイを訪れたのは2011年。当時流行していたバックパッカーに憧れて、リュックひとつでバンコクへ。 「大学の卒業旅行で王宮や寺院などの観光地を1ヶ月かけて回る予定でした。しかし、旅行2日目に財布を落として全財産を失ってしまったんです」  しょっぱなから、まさかのトラブルに見舞われた東野さん。まだ学生だったため、クレジットカードも持っていなかったのでキャッシングもできない。また、家族に連絡して送金をしてもらうことも考えたが旅行期間中に間に合うかわからなかった。  普通であれば、困ったときに向かうのは日本大使館だろう。だが、東野さんが向かったのはタニヤだった。  タニヤとは駐在員御用達のカラオケなどが立ち並ぶ、日本人街として知られるエリアだ。まず、東野さんは、そこにあったアイリッシュパブに足を運んだ。 「アイリッシュパブの店員に『掃除でも皿洗いでもなんでもいいから働かせてください』と頼み込んだんです。お金がないのなら、働いて稼ぐしかないと。しかし、店員に英語を話せるかと聞かれて『話せない』と答えたら断られてしまいました。タニヤの道端で座り込んで途方に暮れていると、タイ人の女性に声をかけられたんです」  その女性は、タニヤで日本人客を相手にするカラオケ店のママだった。

タニヤのカラオケ店の客引きとして働く日々…

ネオン

※写真はイメージです(Photo by AdobeStock)

 事情を話すと、ママに「ちょうど、日本語を話せるスタッフが欲しかった」と言われた東野さん。そのまま、カラオケ店の客引きとして働くことになった。 「当時、タニヤには日本人の旅行者や駐在員で溢れており、客引きの女の子同士も取り合いのような状態でした。そんな中、日本語で客引きをする僕は珍しかったのでしょうね。1日に何組ものお客さんを呼び込めて、1ヶ月間働いて1万5000バーツ(当時のレートで約3万9千円)の給料をもらえました」  旅行のつもりが、カラオケの客引きとして働くこととなった東野さん。こうして滞在中の食費を稼ぐことができ、1ヶ月後、無事に帰国することができたという。  その後、東野さんは医療系の財団法人で就職が決まり、寝具部や歯ブラシの歯科機材の販売を行う看護部を担当することとなった。手取りは18万円ほどだった。 「同級生の中ではまだもらえている方ではあったので、生活には満足していましたが、タイで過ごした1ヶ月間が忘れられなかったんですよね。そんなとき、知り合いがバンコクで旅行会社を始めるというので、その立ち上げメンバーとして手伝ってくれないかと誘われました。そこで思い切って仕事を辞めて、バンコクに行くことを決意したんです」
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月収は約5万円
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東京都出身。20代を歌舞伎町で過ごす、元キャバ嬢ライター。現在はタイと日本を往復し、夜の街やタイに住む人を取材する海外短期滞在ライターとしても活動中。アジアの日本人キャバクラに潜入就職した著書『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』(イーストプレス)が発売中。X(旧Twitter):@ayumikawano

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