作法などない自由な時間
なすとビールの2セット目を堪能し、そろそろ日本酒&寿司タイム。
「松竹梅 豪快 辛口(冷酒)」(539円)を。寿司はさんざん悩んだ末、
「上煮穴子一本」(374円)、
「かにみそマヨ」(110円)、
「こぼれかにカマコーンマヨ鬼ペッパー包み」(110円)の3種類を頼んでみることにした。すぐに、レーンで目の前に到着しだす寿司たち。
「松竹梅 豪快 辛口(冷酒)」
「上煮穴子一本」
メニューに「直火炙り」と書かれていた上煮穴子、目の前に置くだけでふわりと香ばしい。当然これを、ぱくっとひと口ではいかない。穴子の身をはしから少しずつ切り取っては、くいっと酒のつまみにする。甘めのたれが染みたふわとろの身が、めちゃくちゃうまいな。
「かにみそマヨ」
かにみそマヨも、作戦としては同様だ。本当は人に話すのもはばかられることだが、僕は回転寿司でかにみそ軍艦を頼み、これまたひと口ではいかず、
箸でちびちびとかにみそだけをつまみとりながら酒を飲むのが好きなのだ。かっぱ寿司のかにみそ軍艦は、みそがたっぷりで嬉しい。最後に食べることになる、うっすらかにみそ味の残ったマヨネーズ軍艦も悪くない。けれどもこのことは、絶対に口外はしてほしくないし、はしたないので決してまねもしないでほしい。これは、自分が楽しんだかっぱ寿司飲みの記録を正直にお伝えしておこうという、僕なりの誠実さなのだ。
「こぼれかにカマコーンマヨ鬼ペッパー包み」
こぼれカニカマコーンマヨ鬼ペッパー包みだけは、海苔で巻いてそのカオス感を、開発者の想いとともにひと息に味わうのが良さそうだ。とにかく、楽しくなってきたぞ!
これぞ回転寿司飲みという光景
決してまねはしないでください
オーダー制の無料のがりもいいつまみ
予想どおりにそれぞれが、寿司でありながらいい酒のつまみでもあり、それらをひとりじめする自由な時間が最高に楽しい。こぼれかにカマコーンマヨ鬼ペッパー包みは、
記載されているすべての食材の味がそのまま口に広がるという感じで、ちょっと微笑ましくも、うまくないわけがない。
さて、そろそろ身も心も大満足だ。ただ、最後にもう1皿くらい、ザ・寿司! みたいなメニューを味わって帰ろうかな。こんなとき、豪放磊落な好漢ならば、やっぱり「みなみ鮪大とろ」あたりを選ぶんだろう。読者のみなさまだってそういう寿司を見たいだろう。けれども、たった1貫で374円もする。勇気が出ない。とか言って、さっき頼んだ日本酒のほうがもっと高いんだけど、なぜか酒だけは躊躇なく頼めてしまうのが酒飲みの悲しさだ。
結果、すみません、今回は
「大切りとろびんちょう」(110円)でご容赦いただけたらと。
「大切りとろびんちょう」
しかし! やってきたそれは、看板に偽りなしの大切りで、口に運んだ瞬間にとろけだす絶品だ。じゅうぶんうまい! あ〜、もうなにも思い残すことはなし。
ごちそうさまでした
なんて言いつつ、回転寿司で本当に思い残すことがなかったためしはない。あれも食べたかった、これも食べたかった、やっぱり大とろにしておけば……などとうじうじしつつ、結果、もう少しだけ食べすぎることになる。 今日もまた、大好物のいかゾーンから、
「いか食べ比べ(やりいかゲソ・真いか)」(110円)を追加してしまうのだった。
「いか食べ比べ(やりいかゲソ・真いか)」
やっぱりうまいな、いかは……。
回転寿司飲みの可能性は、店舗と酒飲みの数だけある。ほぼ無限だ。それにしても、久々のかっぱ寿司、すごく良かったな。アプリで情報をチェックしつつ、また飲みに行くことにしよう。
<TEXT/パリッコ>
1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。X(旧ツイッター):
@paricco