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「日本経済を支える100歳ビル」に「間もなく消えるレトロビル」も…初開催“建築フェス”で名建築と触れ合ってみた

建築当時の意匠が残る天井

東京建築祭

日証館のエントランス。照明にも石が使われているところが珍しい。「建築を見るフェス」ゆえ、次回も開催されるならば建物の細部の装飾を観察することができるオペラグラスや望遠の利くカメラなどを持っている人はぜひ持参しよう(写真:若杉優貴)

 日証館で特別公開されたのはエントランスホールと階段部分。混雑していたもののすぐに退出しなければいけないということもなく、建築当時の意匠が残る天井や日本橋川を望む石造りの階段室を思う存分見学することができた。  ちなみに、日証館の1階部分にはアイスクリームカフェも出店している。見学当日は夏日だったこともあり、見学後に立ち寄る人も多かったようだ。日本橋での買い物のついでや隣接する東証を見学した際などに立ち寄って、100年の歴史に想いを馳せてみては(カフェは水曜定休、東証は平日のみ開場)  日証館を見学し終わったあとは、1878年に鎮座した証券業界の神様「兜神社」にお参り。ここからは、隣接する「日本橋ダイヤビルディング」(三菱江戸橋倉庫ビル、1930年築、今回の公開対象ではないが見学可能)を一瞥したあと神田へと向かうことにした。
東京建築祭

日証館のすぐ近くにある歴史建築「日本橋ダイヤビルディング」(三菱江戸橋倉庫ビル)。こちらは1階が「三菱倉庫・江戸橋歴史展示ギャラリー」として公開されている(毎週日曜休館)(写真:若杉優貴)

②丸石ビルディング(1931年築)

 続いて訪れたのは千代田区の神田駅近くにある「丸石ビルディング」(大洋商会ビルディング)。1931年に大洋商会のオフィス兼商店として建築されたもので、「下層階は商店・高層階はオフィス」という、現在にも通じる形式の複合オフィスビルだ。2002年には国の登録有形文化財となっている。ちなみに、設計者の山下寿郎氏は戦後に霞が関ビルディングやNHK渋谷放送センターなどを手掛けている。
東京建築祭

神田にあるレトロビル「丸石ビルディング」。1階はエントランスと商業ゾーンとなっていた。現在も1階には輸入絨毯専門店が店を構える(写真:若杉優貴)

 丸石ビルで特別公開されたのは1階のエントランスホール部分(撮影禁止)。公開部分が広くないこともあり、数分並べば入ることができた。スクラッチタイルで彩られたロマネスク調の建物のエントランスに立つと出迎えてくれるのは立派な石獅子。アーチをくぐると現れる緻密な装飾が施された天井は圧巻だった。
東京建築祭

丸石ビルのエントランスを護る石獅子。正面から眺めると険しい顔つきだが、下から見上げると少し優しく微笑んでいるようにも見えた(写真:若杉優貴)

 戦前、この丸石ビルの下層階には大洋商会の自動車ショールームもあったという。「戦前の自動車ショールーム」というと恐らく富裕層しか縁がない場所。建物の荘厳な装飾にふさわしい店構えだったことだろう。
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神田から中央区に入り移動したのは…
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都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitter:@toshouken

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