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「日本経済を支える100歳ビル」に「間もなく消えるレトロビル」も…初開催“建築フェス”で名建築と触れ合ってみた

⑤国際ビルヂング(1966年築)

 新橋から再び千代田区へと戻り、日比谷に到着して最初に向かったのは1966年に竣工した「国際ビルヂング」。国際ビルヂングという名前には馴染みがないかも知れないが、「帝劇のある建物」(正確には2つのビルの合築)と言われればピンとくる人が多いだろう。
東京建築祭

「国際ビルヂングなんて聞いたことない!」かも知れないが、帝劇がある場所。エネルギー大手の出光グループ本社があることでも知られていた(現在も同社子会社が入居)(写真:若杉優貴)

 国際ビルヂングは特別公開されている場所がある訳ではなく、共用部であるエントランスに建物の来歴などが展示されていた。とはいえ、昭和レトロ感満載のエレベーターホールの美しいモザイク画や星をイメージしたような照明を堂々と撮れるのは「建築祭」という大義名分あってこそだ。  最初に述べたとおり、この国際ビルヂングと帝国劇場ビルは老朽化のため2025年2月ごろに閉館し、再開発が予定されている。日中ならば共用部のエレベーターホールは自由に入ることができるため、建築祭で見逃した!という人はお早めに。
東京建築祭

国際ビルのエレベーターホール。モザイクタイルに星のような照明が浮かぶ、ちょっとレトロで美しい空間が見られるのもあと僅かだ(写真:若杉優貴)

⑥新東京ビルヂング(1963-65年築)

 続いて向かったのは国際ビルヂングのすぐそばにある「新東京ビルヂング」。こちらも国際ビルヂングと同じく三菱地所による1960年代築の昭和レトロビルで、共用部で建築祭の展示が行われていた。  ちなみに、国際ビルや新東京ビルが建築される前にあったのは三菱グループが中心となって明治時代に造り上げた「一丁倫敦(いっちょうロンドン)」と呼ばれる赤レンガの街並みだったそう。当時の写真も展示されており、「文明開化の時代」から一気に「近代化的オフィスビル街」へとタイムスリップしたことが分かる。
東京建築祭

昭和30年代末に生まれたレトロビル「新東京ビルヂング」。1期部分は東京五輪前の1963年に完成、丸の内にある三菱グループの建物のなかでも古参だが現在リニューアル中(写真:若杉優貴)

東京建築祭

新東京ビルのエントランスロビー。個性的な天井照明に薄型モニター画面、きっと当時の人が思い描いた近未来だと思う(写真:若杉優貴)

東京建築祭

新東京ビル内にあった東京建築祭の特別展示。国際ビルや新東京ビルが完成する直前、この地にあったのは震災や戦災を潜り抜けた赤レンガの建物群だった(写真:若杉優貴)

 先述したとおり、国際ビルや新東京ビルの近くには同じく三菱地所が管理しており2023年10月に閉館したレトロビル「有楽町ビルヂング」「新有楽町ビルヂング」の姿もあった。これら2棟は再開発のため2024年中に解体される予定となっている。もし建築祭が1年早かったならばこれらの建物も見学できたかも知れない……と悔やまれる。  周囲のビルが再開発で生まれ変わろうとするなか、この新東京ビルは現在お色直しの真っ最中。リニューアル工事は上層階のオフィス部分・下層階の商業施設部分の双方で行われており、2024年11月に全館完成する予定だ。竣工から60年を迎えた昭和のオフィスビルは、これからも有楽町・丸の内の人々に親しまれることだろう。
東京建築祭

2023年10月に閉館したばかりの「新有楽町ビルヂング」。再開発の槌音が鳴りやまない丸の内・有楽町界隈では、見納めとなる昭和のレトロビルも少なくない(写真:若杉優貴)

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皇居外苑濠沿いにおけるシンボルは?
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都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitter:@toshouken

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