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「歯医者に行ったら歯が悪くなった」“年に1回の歯科検診”思わぬ落とし穴

歯周病の正しい理解を得るか、年に一度の歯石取りの快感を得るのか

歯周病の進行

歯周病の進行によって歯茎が退縮し、歯垢・歯石が多量に付着している

歯周病は今や国民病であり、毎日歯周病の患者さんで歯科医院の予約は溢れていると言っても過言ではありません。歯医者に行くことが億劫だった人が、国民皆歯科検診をきっかけに歯科医院に行き、自分のお口の中の状況を正確に理解して、歯周病に関する事柄を正しく理解して治療に臨めるようになる。患者さんの意識が変わって、歯科医院としっかりと協力関係を結べるなどの行動変容が起きたとしたら、国民皆歯科健診は成功と言えると思います。 しかし、検診結果をあまり理解しないまま、歯石の除去のみを受け、また来年も検診を受けた際に歯石を除去しようと思って帰ったとしたら、これは大失敗です。 むし歯や歯周病は、お口の中の歯周病菌を減らし、どれだけ歯周病の進行を止められるかが重要となります。1年に1回の検診と歯石除去だけでは、毎年歯医者さんに自分の歯周病がどれだけ進行したのかを見せに行っているだけです。 歯周病は進行抑制のために、症状や進行程度に応じた間隔で検診、治療を受けなければならないため1年に1回のみの来院では進行抑制や改善は期待できません。

“その場しのぎ”では意味がない

国が補償してくれる範囲というのはまだ詳細に発表されていません。私たちが予防を行う際には、様々な検査を時間と費用をかけてしっかりと行った上で、その結果リスクとなる事柄を理解してもらい、長期的に改善と維持をしていくものです。 1年に1回、さらっとした検診とその場しのぎの治療を行うことでは患者のお口の健康を責任を持って守ることはできません。もし、患者さんが1年に1回の検診とその治療のみで来院されたとしたら、最初から患者さんのお口の健康を維持するという責任を果たせないことがわかっているのに、受け入れてしまっていいのだろうかという疑問もあります。しかし、1億人以上もの人がいれば、それだけ沢山の生活、考え方や価値観が存在しているものです。 これは歯医者のエゴだと感じる人もいるでしょう。 1年に1回のさらっとした検診と“その場しのぎ”の治療では責任を負えないと感じる歯科医院は、国民皆歯科検診は行いたくないと拒否をするかもしれませんし、どんどん検診で疾患を見つけてすべてのむし歯を治療したいと感じる歯科医院は、積極的に集客を行うかもしれません。 患者さんにとって、歯科医院の選択が今よりも難しいものとなることが考えられます。
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国民皆歯科検診の正しい利用法とは?
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一般診療と訪問診療を行いながら、予防歯科の啓発・普及に取り組んでいる歯科医師です。「一生涯、生まれ持った自分の歯で健康にかつ笑顔で暮らせる社会の実現」を目標にメディアで発信をしています。X(旧Twitter):@nojirimari

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