更新日:2024年12月04日 23:28
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コメの高騰で苦悩する回転寿司チェーン。最高益が相次ぐ好調4社と明暗分かれた“かつての王者”

レーンにこだわり、本来の姿を貫く「くら寿司」

 回転寿司チェーンは衛生管理やいたずら防止などを理由に客席への専用レーンを導入している店が増えている中、業界3位のくら寿司(国内552店、海外129店、2024年10月末時点)だけはレーンを回し続けている。  同店は昔から衛生管理への徹底は定評があり、お客に「より安全と安心を」をモットーとしている。「抗菌寿司カバー鮮度くん」はウイルスや飛沫などから、お客を守る姿勢には昔から高く評価されている。  仕組みとしては、「鮮度くん(寿司カバー)」の上部についているQRコードによる製造時間制限管理システムを導入後、長時間レーン上に置かれた寿司を廃棄するシステムになっている。お客が皿を投入口(皿カウンター)に入れることで洗い場まで自動的に回収され、同時に枚数がカウントされ、精算されるのだ。また常に卓上もすっきりとしているので快適に過ごせるようだ。  出店も積極的に行っており、今期(2024年10月期)は31店舗(国内11店、海外20店)を出店し、はま寿司に続いている。海外はアメリカ68店、台湾58店、中国3店を展開。業績は売上2114億円、営業利益24億円(23年10月期)となっていたが、今期(2024年度10月期)は前年を上回る好調さを維持しており、第三四半期を終えた直近(2023年11月~2024年7月)の業績を見ると、売上1179億円(前年同期比12%増)、営業利益64億円(前年同期は3億7600万円の赤字)を計上し躍進している。

原価率が4%も低下

くら寿司

くら寿司(筆者撮影)

 特に注目すべき点は原価率が40.7%と前年同期比44.6%を大きく下回っている点だ。飲食店にとって最もウェートが高い原価率が4%も低下することは費用構造的に大きく、これが営業利益率が上がった主な要因になっている。メニューの拡充を図りながら、粗利ミックスを活用して原価を適切にコントロールしているようだ。  2024年10月期決算はまだ公式に発表されていないが、11月2日に発表された10月度月次情報によると、全店売上は前期比106.4%と好調に伸ばしている。既存店ベースでも、通期で前年同期比、売上104.1%、客数98.6%、客単価105.5%と、わずかな客数の減少があるが客単価上昇で補っており、売上も伸ばしている。  くら寿司は、全店舗に店舗支援システムがあり、本部から全店舗を見ることができ本部から運営における援助をすることができる。そして、一皿110~150円まで6段階に均一価格ごとに店舗を分類して管理している。立地の需給バランスを勘案して店舗群を集約しており、柔軟に対応しているようである。
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“回らない回転寿司”を標榜するのは?
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飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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