更新日:2024年12月05日 10:17
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コメの高騰で苦悩する回転寿司チェーン。最高益が相次ぐ好調4社と明暗分かれた“かつての王者”

“回らない回転寿司”を標榜する「魚べい」

 業界4位の魚べい(国内185店、海外241店、2024年3月時点)の業績は著しい伸びを見せている。そもそもは元祖回転寿司である「元禄寿司」のフランチャイズから独立し、「元気寿司株式会社」へ社名変更している。廻らない回転寿司を標榜し、袖看板にも明示している。各テーブルには特急レーンで届ける仕組みである。  親会社は伸明ホールディングスで米の卸売り事業を展開する非上場企業である。米の卸会社が垂直統合で回転寿司チェーンを展開し、その強みを最大限に発揮している。親会社と子会社がシナジー効果を発揮し、利益を享受し合うのは当然。伸明はアグリフード・バリューチェンの構築を目的に川上事業(生産者支援)・川中事業(食の加工)・川下事業(中食と外食に参入)を垂直統合した食関連の多角化を実践している。  ちなみに親会社の神明は営業利益率49.8%とほぼ半分が利益という圧倒的な収益力だ。国内外で426店舗出店していて、内訳は国内185店、海外241店と海外のほうが多い。ブランド別では国内は魚べいが169店、元気寿司は9店と国内は魚べいブランドに経営資源を集中しているようだ。しかし、海外では逆に元気寿司が225店、魚べいが6店、本格志向の寿司チェーン千両が26店となっており、地域ごとにブランドの棲み分けを行っている。

競合他店よりも儲ける仕組みが確立

魚べい

魚べい(筆者撮影)

 決算資料(2024年3月期)から業績を見ると、売上618億円、営業利益49億円、営業利益率8.0%と、大型回転寿司チェーンの平均値である5%を3ポイントも上回っており、競合他店よりも収益力が高く、儲ける仕組みが確立されているようだ。原価率は41.1%と他社と比較すると低いのが明白で、米の仕入れが低いのもあるが、顧客満足度の高い商品ラインナップでありながらも、店側の原価管理も徹底されているようだ。  収益向上策として、①インフレを見込んだ売価の適正化、②メニューミックスの効果的な実施で売上と利益のバランスの最適化などを徹底しているようだ。テレビ番組の出演やSNSの効果的活用で認知度も高まってきている。回転寿司の鉄板的ネタであるマグロはネタの大きさからコスパ最強ではと高い評価であり、その他創作寿司やデザートも人気だ。それらは週末のウエイティングルームの込み具合を見ればよくわかる。  直近(2024年4~9月上期実績)の業績を見ると、売上338億円(前年同期比9.2%増)、営業利益39億円(前年同期比62.4%増)、営業利益率11.6%と2桁台の営業利益率は回転寿司業態としては驚異の数字だ。ROE(自己資本利益率)27.4%と投資効率も高く、自己資本比率41.3%と財務も安定だ。
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5位からの巻き返しを図るパイオニアは?
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飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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