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庶民にとって「国内旅行」は今や“高嶺の花”に。宿泊費高騰の影響で増加する「旅行に行きたくても行けない人たち」

国内で宿泊旅行をする人の数は2019年比で「1割減少」

 宿泊費上昇のスピードは極めて速く、賃金上昇がとても追いついていません。  厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、事業所規模5人以上の月間現金給与総額は2019年が32万2552円、2023年が32万9777円でした。上昇率はわずか2.2%。しかも国民負担率は上がっており、2019年は44.2%でしたが2023年は46.1%でした(財務省「国民負担率の推移」)。  旅行に対する負担増が家計に与える影響が大きいため、旅行に行きたくても行けない人が増加している様子も見てとれます。  レジャー白書によると、2023年の余暇活動希望率における国内旅行は65.1%でトップ。2位は読書で37.1%。実に2位との差は28ポイント以上も広がっています。更にこの国内旅行参加希望率は2019年が61.1%。なお、参加率は1年以内に行った人の割合であり、参加希望率は将来やってみたいとする人の割合です。  実際の数も減少しています。2023年の宿泊旅行者数は延べ2億8105万人で、2019年比で1割も減少しました。2024年7-9月は8554万人、同じく2019年比で1割の減少。コロナの影響が完全に消失した2024年に入ってもなお、宿泊旅行をする人の数は回復していません。

施設に利益をもたらす「ダイナミックプライシング」の功罪

 一方、人生において余暇を重視する人の割合は増加しています。レジャー白書によると、「仕事よりも余暇の中に生きがいを求める」との回答は2023年が34.1%、2019年は29.4%。なお、2009年におけるこの割合はわずか18.6%でした。  働き方改革やワークライフバランスが叫ばれるようになり、仕事中心の生き方から心が解放されている様子がわかります。余暇参加率のランキングを見ると、動画観賞や読書、音楽鑑賞、SNSなどのデジタルコミュニケーションが上位に食い込んでいます。お金がかからない余暇の過ごし方が広がっているのでしょう。  参加率の第2位には、コロナ前と変わらず外食がランクインしています。この分野も価格は高騰中。しかし一方で、「焼肉きんぐ」のような家族で楽しめるコストパフォーマンスのよい店舗はインバウンド需要の恩恵を受けなくても好調をキープしています。庶民に支持されているのです。  ホテルなどの宿泊業界は、早い段階でダイナミックプライシングが浸透していました。これは需給状況を見て価格を変動させるもので、需要が旺盛であれば半ば自動的に価格が調整される仕組みです。  そのシステムが提示する価格が、今の一般的な感覚と乖離し始めているのは明らか。旅行を楽しみたい人々は現状を打破する仕組みやホテルを待ち望んでいるでしょう。わかりやすい価格設定で、コストパフォーマンスが高いコンテナ型のホテルは更なる拡大余地があるかもしれません。資材費が高騰する中で建築コストも安いため、運営側にとっても合理的なビジネスであるはずです。 <TEXT/不破聡>
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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