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「都道府県魅力度ランキング最下位」から“脱出した”茨城県。躍進を支えた公式YouTubeの登録者数は「全国2位」

全28種…大反響の「女将カード」ができるまで

女将カード

話題を呼んだ「女将カード」(五浦観光ホテル・村田和華子さん)

既存の行政による広報活動の意義は、「正確な情報を広く届けるもの」がメインとなる。しかしながら、菊池氏は「我々が目指しているのは、情報を受け取った人の記憶に深く刺さり、残り、その後、行く、食べる、買うといった行動変容に結び付くこと」とする。ゆえに「尖った」発信が必要だと考えているという。例を挙げると、菊池氏が前職時代の2023年に大型観光キャンペーンのプロモーションとして実施した、袋菓子「マイク・ポップコーン」(ジャパンフリトレー株式会社/本社:茨城県古河市)を使った企画だ。 「袋の裏に、プロ野球チップスのようなカードをつけました。入っているのは、茨城の旅館の『女将カード』です(笑)。全28種あり、それぞれ戦闘力も書かれているので、バトルもできるようになっています」 当初は、菓子メーカーの担当者にも意図が伝わらなかった。周りの人ほとんどが「そんなもの誰が欲しいの、売れないよ」と反対意見だらけのなか、主役である女将衆と当時の担当者(小林直人氏)の推進力によって、奇跡的に実現にこぎつけた。 「旅や観光の目的は、美しい景色や美味しい食べ物。ですが、リピートにつながったり、ファンになったりするのに真に必要なのは『人』の魅力ではないかと。パッと頭に浮かんだのが、コロナ禍で苦労されながらも明るく頑張ってきた旅館の女将さんたちでした」 茨城に来てもらうことを目的としているため、原則として県内のみでの取り扱い。それでも、発売するとあっという間に注目を集め、即完売。大きな話題を呼び、すべての在京民放テレビで紹介されるほどの成功を収めた。

女将が立ち上がるなら…今度は若旦那たちが表舞台に

いばらき若旦那

「いばらき若旦那」のメンバーたち

実は、茨城が「東京から近い」のは、諸刃の剣であったようだ。 「すぐ来れるぶん、目的地だけを楽しんですぐ帰ってしまうパターンが少なくありません。できれば食事をしたり、泊まってもらったりしてほしいのが本音。女将カードで、旅館を利用してもらうきっかけを作れました。でも個人的に何より大きかったのは、『茨城がなんか面白いことやってるぞ』という評価や、『不安だったけど、こんなに喜んでもらえてやって良かった』という女将さんたちの声でした」 女将カードのメディア露出の広告換算額は、数十億円にものぼる大成功だったという。そして今年の観光キャンペーンでも、「想像超え」をキーワードに新しい企画へ踏み出した。 「実は女将カードは2年連続でやったので、次もカードという予想を覆したかった。天邪鬼なので『今度はそうきたか』と言わせたい。そこで、純烈さんをイメージして、昭和歌謡ユニット『いばらき若旦那』を作りました。旅館の跡取りである若旦那をオーデションで集めて結成したんです。オリジナル楽曲を作り、CDやカセットテープを販売しています。メンバーが自分の旅館でコンサート付きディナーも開催しています。実は、カードになった女将さんの息子さんもメンバーになっているんですよ」
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“万人受けを捨てた”YouTubeは全国2位の座に
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Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

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