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「患者は1年風呂ナシ」“過疎地の精神病院”の実態を職員が暴露。「行政も見て見ぬフリをしています」

精神科病院における医療の質や患者の人権をめぐる問題は、後を絶ちません。 2023年に報道された東京都八王子市の滝山病院では、虐待に加えて不適切な治療や診断の疑いも指摘され、精神科医療の閉鎖性がもたらす問題が明らかになりました。 さらに、最近では青森県八戸市のみちのく記念病院で、患者間殺人隠蔽いんぺい事件が発生したことが報道され、波紋が広がっています。 こうした事件の背景には、病院の閉鎖的な体制だけでなく、実情を知っていても地域が声を上げづらい実態があります。ずさんな管理体制の精神科は、報道されていないだけで日本各地にまだまだ存在します。 今回は、自身が勤める精神科病院で異常な実態を目の当たりにしているというマイリさん(仮名・32歳)にお話を伺いました。
マイリさん

マイリさん

お風呂に1年間入れていない患者さんが普通にいる

マイリさん:私はA病院の事務方として1年半ほど働いています。もともとこの病院がある地域にはゆかりがなく、夫の仕事の都合で引っ越してきました。新卒からずっと精神科で働いており仕事内容も好きなので、この地域でも精神科への就職を希望していました。 求職中に知り合った人にこの病院のことを聞いても、評判はよくありませんでした。しかし、前職の経験や同じく精神科で働く友人の話から「精神科は比較的ホワイト」というイメージがあり、そのときは信じられなかったんです。 また、この地域は日本の中でもかなり田舎で、通勤圏内の精神科は限られます。ほかに病院を探すとなると県外に出なければなりません。いろいろな条件を考慮したうえで、この病院で働くことになりました。 ――入社して病院に違和感を感じたのはいつ頃ですか? マイリさん:病院への違和感は、入社してすぐに感じました。まず、私の教育係のスタッフから、お風呂にずっと入れていない患者さんがいると聞きました。本来であれば、患者さんは週に2回は入浴するルールになっています。 もちろん患者さんの中には入浴を拒む方もいますが、清潔保持や健康管理のためになんとか入浴させるのがプロの仕事です。しかし、この病院では入浴をしたがらない患者さんは放置されており、1年間もお風呂に入れていない人もいるんです。 ――教育係の方は、その状況に危機感を覚えていないのでしょうか? マイリさん:教育係の人はさまざまな病院で経験を積んだ方で、この状況をよくないことと認識していました。気づいてはいても、院内の体制がよくないので自分ではどうしようもできないのでしょう。それを見て、私自身もこの病院の体制に不安を感じるようになりました。 しかも、病棟を見回りしても、看護師がどこにも見当たらないんです。田舎の精神科は高齢者が多いので、事故が起きないよう食事やトイレ、生活動作全般をよく見ていなければならないのに…

認知症のスタッフを雇い続けたら虐待が起こった

――病院なのに看護師がいないとは… マイリさん:スタッフにとっても環境がよくないため、看護師不足が深刻なんです。 そのため、看護師は病棟の患者さんに時間を割かないようにと考え始め、おむつ交換はカーテンをせずに丸見え状態、ズボンを履かせずおむつ姿のままなのは日常茶飯事です。一時的に入れた尿カテーテルも、体調がよくなり必要がなくなってもずっと入れっぱなしです。 ――人権侵害が常態化していると。 マイリさん:そうなんです。看護師不足になると、働いてくれれば誰でもいいとの考えから、人事も甘くなります。以前、在籍中に認知症の診断が下ったスタッフがいたのですが、人手が足りないからと雇い続けました。 そのスタッフは感情のコントロールができなくなっていき、言うことを聞いてくれない患者さんを叩いたり首を絞めたりすることもあって…ほかにも、性的虐待もあったみたいです。
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院長の一存で患者の命が決まってしまう
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OLを辞めて韓国留学を経験。アラサーならではの恋愛やお悩みをシェアするライター。韓国文化と恋愛についての記事を中心に執筆中。趣味はひとり酒。

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