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“元気で明るい”20代女性店員の裏切り「100万円以上着服していた」…その理由に驚愕「お金がほしかったわけではない」

「最初は誰も信じなかったですね。あんなことが本当にあるなんて」  そう語るのは、居酒屋店のオーナー、大井和人さん(仮名・52才)だ。繁華街の裏路地にひっそりと佇むこの居酒屋は、地元の常連客に愛されてきた。カウンター席には仕事帰りのサラリーマンたちが集まり、無駄話をしながら手作りの肴を楽しむ憩いの場だ。しかし、そんな場所でも事件は起きる。  事件が発覚したのは、昨年の秋のことだ。5年勤めていたアルバイトの石田琴美さん(仮名・28才)が、店の財務に深刻な問題を引き起こしていた。
居酒屋店員

画像はイメージです

「手書きの伝票」を悪用し、不正行為に手を染める

「石田は最初から元気で明るい子で、常連のお客様にも好かれていました。遅刻もしないし、仕事にも真摯に取り組む子でしたね。私だけじゃなく、みんな彼女のことを信頼してましたよ」  石田さんは、日々の接客業務をきちんとこなし、特に一人で黙々と働く姿勢が目立った。そんな彼女が、店の会計で不正を働いていたとは思いも寄らなかった。  彼女が行っていた手口はシンプルかつ、巧妙だった。  居酒屋の会計システムは手書きの伝票を使っており、複写式になっている。1枚目は会計の際に客に渡され、2枚目の複写された伝票は店側が保管する仕組みだ。

酔っている客からは大胆に…

 彼女は客から多く取り、差額を懐に入れた。  ただし、客から受け取った金額と店が保管する伝票に差が生まれると、ネコババはすぐにバレる。逆にいえば、この数字が合ってさえいれば、店から疑われることはない。  これを逆手に取り、石田さんは不正を働かせた。 まず、インクの出ないボールペンで金額を記入する。すると、複写式の2枚目にだけ金額が写り、1枚目には何も書かれない。次に、インクの出るペンで1枚目にだけ別の金額を書く。たとえば、店に残る2枚目には「8,000円」、客に渡す1枚目には「10,000円」と記載すれば、差額2,000円が生まれるという仕組みだった。  具体的には、1人客からは取らず、2人客からは数百円、そして3人以上の客からは千円~数千円を不正に取っていた。客のテンションや酔っている状態、細かい性格か大雑把なのかも見極め、さらに泥酔していると見える客からは1万円近く多く取ることもあったという。これにより、彼女は毎日のように不正を重ね、かなりの額を着服していった。  だが、この巧妙な手口も、ついには発覚することとなった。きっかけは、ある常連客のささやかな疑念だった。
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客からの指摘を受け、問い詰めてみると…
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