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安倍前首相「不起訴不当」議決の意味<法学者・小林節氏>

―[月刊日本]―

明白な選挙区民接待供応(買収)

検察 安倍首相(当時)は、本来は国に対する「各界功労者」を首相が招く春の「桜を見る会」に、自分の選挙区の後援会員達に声を掛けさせて多数を招いた。それを安倍事務所がツアーを組織して上京させ、都内の最高級ホテルの一つで前夜祭まで行っていた。その宴会の費用が参加者が支払った一人5000円の会費では賄えず、5年間で900万円を安倍事務所の資金(安倍代議士のポケットマネーだそうだ)で補填した。  公選法は、有権者を買収・接待供応してはならないと規定し(221条1項1号)、それは犯罪で、5年以下の懲役または禁錮になり(221条1項1号)、さらに議員は当選無効になる(251条)。

「記帳漏れ」で秘書だけ略式起訴

 上記の事実は、明らかに、公選法違反の買収・接待供応である。  ところが、昨年12月、検察は、安倍後援会の会計責任者であった安倍代議士の公設第一秘書を、900万円の金の動きを記帳しなかった、政治資金規正法上の「不記帳」の罪で略式起訴するだけで捜査を終了させた。  しかし、まず、上司から預かった個人的なお金を「上司の承諾もなしに」900万円も「勝手に」支出しておいて横領罪にもならないことが不可解である。さらに、何よりも、選挙区民に対する「買収・接待供応」という犯罪の本体がお咎めなしで、そのための資金の流れを記帳しなかったという形式犯の略式起訴(罰金刑)だけで済まされて良いものであろうか?

日本は法治国家ではないのか?

 これでは、首相であれば国家予算の目的外支出(国費を、国の功労者ではなく、自分の後援会会員の接待に私的に流用した財政法違反)が赦され、かつ、ポケットマネーで自分の選挙区民を買収・供応したことも赦される。そして、単にその買収資金について「記帳しなかった」ことだけを「秘書が」起訴されて一件落着とは、法律の存在を余りにも馬鹿にした話である。  日本国憲法の下で、わが国は民主的な法治国家であるはずだ。つまり、主権者・国民の直接代表で国権の最高機関である国会が制定した法律は、誰に対しても平等に適用されるべきものである。それが法治国家であり、法の下の平等の保障である。
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