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特定外来種に対する各地の取り組みの違い

特定外来種に対する各地の取り組みの違い

外来生物法の規定によれば、特定外来種は捕まえ次第殺して駆除するのが大原則。だが、前出の山崎さんは外来種の問題に別角度からアプローチをしている。それが、川崎市の稲田公園の生け簀に設置されている「おさかなポスト」だ。

「外来魚に限らず、一旦飼われた魚は、多摩川には存在しない魚病にかかっている可能性がありますから、絶対に放流してはいけません。とはいえ、家庭ではもう飼えなくなっても殺すには忍びないのが飼い主の情ですから、そういった魚をポストに預けてもらい、小中学校を中心に里親を探す活動を行っています」

 さすがに特定外来種は預かることができないし、密放流される魚のすべてを受け入れられるわけではない。しかし、単純な駆除ではなく、命を生かしつつ自然環境保全の意味を子供たちに伝える点で極めて有意義な活動であろう。

 一方、ブラックバスが駆除対象ではない地域も存在する。バス釣りで名高い芦ノ湖をはじめとする4湖ではオオクチバスに漁業権が設定されており、地元の漁協は釣り客からの入漁料収入を水産資源の保護増進に充てる立場だ。芦ノ湖漁協の鎌倉俊数さんは語る。

「そもそも、芦ノ湖は4000年前の火山噴火でできたばかりで、昔はウナギかナマズばかりの湖でした。今棲息するオオクチバス、ワカサギ、ニジマス、ブラウンなどはすべて外からの移殖魚です。琵琶湖のバスは鮒ずしにするフナやアユを食べるし、霞ヶ浦ならワカサギを食べてしまいますが、芦ノ湖ではまるで事情が違うのです」

 芦ノ湖では、かつてワーム型のルアーを呑み込んで死ぬバスが続出し、個体数減少を補うために琵琶湖などから移入していた時期もあったというが、今ではそれも外来生物法施行により不可能だ。

 まるで、禁煙ファシズムに包囲される喫煙者のようないささか寂しげな口調で、鎌倉さんは続ける。

「漁協はワカサギやニジマスについては、人工孵化や放流によって資源の増進に努めています。ですが、オオクチバスは人工産卵床の設置などで、産卵しやすい環境をつくる程度のことしかもうできないのです」

 ’93年の生物多様性条約の締結以来、生物相の多様性について価値を認めるのは、世界共通の流れである。しかし、広い日本を十把一絡げに、ガチガチの規制をかけるのはいかにも乱暴で安易だ。ブラックバスを追う釣りバカもアユを追う漁師も泣かせずに済む方法はないのだろうか。

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かつては「おさかなポスト」に入れられて、今は山崎さん宅で飼育されている魚たち。
エンゼルフィッシュ(左)、オスカー(中)。ケヅメリクガメ(右)は体長1m長の大物だ


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下水道整備で湖の透明度が上がり、バスが岸辺に来なくなった芦ノ湖。
最近の釣り客はワカサギやニジマス狙いなのだとか


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