[中国の狡猾資源戦略]賄賂、労働者引き抜きetc. なりふり構わず資源を確保
戦乱が激しさを増すアフガニスタンに、総額1兆ドルとも推定される資源が眠っている――。圧倒的な資金力で真っ先にその利権を獲得したのは、着々と資源戦略を展開する中国だった!
賄賂、労働者引き抜きetc. なりふり構わず資源を確保
急激な経済成長を続けてきた中国のなりふり構わない資源獲得戦略に、”徒手空拳”で挑む現場の日本人からは「とてもかなわない」との悲鳴も聞こえてくる。
「倫理やルールの感覚などなく、露骨なやり方で奪い取りにきた」
鋼鉄に耐磨耗性、耐食性を持たせるために製鉄過程で用いたり、乾電池の材料にしたりするレアメタル、マンガン鉱石の採掘事業をナイジェリアで行っている永川一郎氏(61歳)はこう振り返る。
「現地業者からの委託で、サンプル収集のために村人を100人ほど雇って手掘りでの採掘をしていたところ、中国企業により高い日当で全員を引き抜かれました」
やむなく近隣の村から人を雇ったが、今度は村同士での軋轢が生じてしまった。結局、作業が進まず納期に間に合わない事態となり、その鉱山からは手を引かなければならなかったという。
「すると、ライバルがいなくなった中国企業は、今度は日当を思い切り引き下げました。引き抜かれた村人たちはウチで働いていたよりも低い賃金で働かざるをえない状態になりました。ナイジェリア人もそうしたズルいやり方を知っているので、中国企業の評判は悪い。でも、彼らは生活に余裕がないので、目の前にパンを差し出されると飛びついてしまう。中国企業はそうしたこともわかってやっている」と悔しそうに語る。
中国企業がこうした手法を用いてまで資源獲得に挑んできたのは’07年頃からで、「それまでは2tトラックで運んでいく程度のバイヤー的な商売だったのが、資金力を背景に地元業者を買収するなど中国パワーがアフリカ全土に一気に投入されるようになった」と永川氏は言う。
中国は’05年に第11次5か年計画を策定。鉱物資源の需要が増すことを見越し、国内にない資源を海外投資で獲得し始めた。中国・香港の企業が関与した’10年の鉱業関係の買収・投資は130億ドルと、’05年の100倍に達したとのリポートもある。
「中国企業は、賄賂を渡して契約を取るのも常套手段。公害対策などアフターケアも考えていない。結局は後々コストがかさむことになるのに、信頼を得ることを考えておらず、何十年も先まで続く商売だとは思えません」(永川氏)
(左)日本企業が開発にこぎつけたマンガン鉱石採掘現場で作業するナイジェリア人労働者たち。
写真/永川一郎(KENLYN)
(右)未開発のアフガニスタンの鉄鉱山
撮影/安田純平
― [現地ルポ]中国の狡猾資源戦略を暴く【6】 ―
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