中国が産油国や石油企業に465億ドルを融資、資源購入契約を獲得
戦乱が激しさを増すアフガニスタンに、総額1兆ドルとも推定される資源が眠っている――。圧倒的な資金力で真っ先にその利権を獲得したのは、着々と資源戦略を展開する中国だった!
【石油】
産油国や石油企業に465億ドルを融資、資源購入契約を獲得
「近年の中国は、金融危機の機会も素早くとらえて、これまでのニッチな地域での権益獲得から、石油メジャーと組んでの権益獲得へと活動規模を拡大させてきました」と石油天然ガス・金属鉱物資源機構主任研究員の竹原美佳氏は解説する。
「中国は’96年に原油の純輸入国となりましたが、アクセス可能な石油資源の採掘権の多くは石油メジャーが押さえているため、後発の中国が獲得できるのは欧米企業が参入できないスーダンなどの地域に偏っていました」
住民虐殺などで欧米諸国に非難されたスーダンや、軍事独裁国家であるミャンマーや北朝鮮との関係も持つなど、「人道」よりも実利で経済活動を進めてきたのがこれまでの中国資源外交の特徴だった。
ところが、’08年の金融危機以降、中国は石油や天然ガスといった資源を担保に融資し、資源購入契約を獲得する「ローン・フォー・オイル」の手法を展開。その額は’09年前半だけで465億ドルにも達している。
「例えば、ロシア国営石油企業ロスネフチは、株価下落で短期借り入れも困難な状態となっていましたが、中国国家開発銀行から150億ドルの融資を受けて債務不履行をまぬがれ、’11年以降の20年間にわたって年1500万tの石油を輸出する契約を結びました。また、同銀行は’09年、債務不履行に陥ったエクアドル政府に10億ドルを融資し、月に300万バレルの原油を2年間受け取ることで合意しています」
「さらにイラク石油利権の入札でも、存在感を見せつけました」と竹原氏。’09年に11件結ばれた契約のうち4件を中国国有石油企業が占めたのだ。生産量最大規模のルメイラ油田は石油メジャーBPと組んで落札している。
「’10年にはシェルと組んで、ガス権益を持つオーストラリアの資源会社アロー・エナジーを32億ドルで買収しました。豊富な資金力と労働力、スーダンなど治安が良好ではない地域で活動してきた『リスク許容度の高さ』などから、石油メジャーは中国と組むメリットを見いだしていると思われます。中国側にとっても、メジャーの技術やブランド力だけでなく、政府色を薄める効果を得ているようです」
イラク北部・キルクークの油田。イラク最大の油田で、中国国営企業も
石油メジャーのシェルと組んで応札したが、報酬をめぐる相違から契約には至らなかった
出所:IAEA MEDIUM-TERM OIL MARKET REPORT JUNE 2009に基づき作成
撮影/安田純平
― [現地ルポ]中国の狡猾資源戦略を暴く【4】 ―
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