冤罪を防ぐためには取り調べの可視化が必要
―[冤罪の魔の手がオレたちを狙う]―
冤罪を防ぐためにも、取り調べの可視化が必要
ここ10年来、弁護の依頼者の傾向が変わりました。前科のない”普通の人”が多くなったのです。ひとつは被害申告をする人たちの意識や、それに対する警察・検察の扱いが変わってきたことがあるかもしれません。被害申告をする人たちの言い分を鵜呑みにしてしまう傾向がある気がします。捜査の過程で、最初あった矛盾点が都合よく変更されてしまいます。裁判官も「被害者は本当のことを言うが、被告人は嘘をつく」と決めてかかっているところがある。
しかし普段の生活に気をつけてさえいれば冤罪に巻き込まれないとも言えないので難しいですね。
「交通違反と同じだ。罰金で済む。否認していれば、あと半年は出られない」などと言われると、どうしてもウソの自白をしてしまう。だから、任意同行は拒否する。そうしないと何日でも取り調べられます。応じるときはICレコーダーで録音しておく。
逮捕されたら弁護士を呼ぶ。今、被疑者国選もありますから。毎日接見に来てもらう。取り調べの記録をつけて、自分の言い分はしっかり記録しておく。たとえウソの自白をさせられても、取り調べの全過程が録音、録画されていれば、事件を知らない人が想像でしゃべって、現場の状況に合わないから捜査官に「違う」と言われて直されたのか、事件を知っている人がすらすらしゃべっておのずと現場の状況に合っているのかがわかると思います。捜査過程では、自白でも目撃でも矛盾点が消されていきます。そして矛盾のある証拠は検察官が隠します。目撃の場合は、その人の記憶自体が変わってしまうことが多い。
捜査の過程が検証できれば、もし誤った方向に捜査が走って起訴されても、誤判はかなり回避できると思います。そういう意味で大きく言えば検察官に証拠隠しをさせないことと、被疑者や参考人の取り調べの全過程可視化は最低限必要なことだと思います。
【今村 核氏】
弁護士。日弁連全国冤罪弁護団協議会座長。
著書に『冤罪弁護士』(旬報社)、『続・痴漢冤罪の弁護』(現代人文社)など
取材・文・撮影/日高 薫 SPA!冤罪取材班
― 痴漢だけじゃない!冤罪の魔の手がオレたちを狙う【6】 ―
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