ジャーナリストが見た 世界の選挙と日本の選挙
―[[世界の選挙]ビックリ!白書]―
候補者の名前連呼、お決まりの選挙ポスターばかりが目立つ日本の選挙。じゃあ世界の選挙はどんな感じなの? というわけで、各国大使館や在日外国人、現地在住日本人に各国の選挙事情を聞いてビックリ! 選挙権年齢はもちろん、投票方法、投票率、選挙運動も日本とは全然違うのだった。これを読めば、アナタも選挙に行きたくなるはず!
ジャーナリストが見た 世界の選挙と日本の選挙
アメリカの選挙はグッズも山盛り。
お祭り感覚で楽しんでますね
これまで取材したなかでは、やっぱりアメリカの選挙が印象的ですね。日本と違ってアメリカ人は選挙をお祭り感覚で存分に楽しんでいますから。
候補者や各政党のTシャツ、ステッカー、缶バッジなどのグッズが山ほど売られ、それらを身に着けることで自分が誰を支持しているかをアピールする。大統領選では何千何万人と集まる大規模な集会で、その政党を応援する有名なミュージシャンが一曲披露することもあります。日本人は支持政党などを秘密にする人が多いですが、アメリカ人は政治的な色がつくことを嫌がらない。真逆の価値観ですよね。
また、対立政党の元支持者で現在はこちらに乗り換えた人をわざと集会の壇上に上げ、対立政党のダメな部分を熱弁させる。Tシャツなどに対立政党を貶めるようなメッセージやイラストを入れる。そんなふうに露骨なまでのネガティブキャンペーンを行うのも日本との大きな違いでしょうね。
台湾総統選の選挙集会も面白かった。学校の体育館を会場にしたりするんですが、壇上には冷蔵庫、スクーター、大型テレビなどが並んでるんです。実は演説のあとにプレゼント抽選会が行われ、参加者はむしろそっち目当て。その後はグラウンドに移動してお食事会です。1000人分ぐらい用意してあったんですが、なぜか対立政党を支持している人も堂々とそこにまざっているという(笑)。一緒になって飲み食いしながら政治論を交わしてましたよ。
集会以外でも、ビルの壁一面に自身の超特大看板を出す候補者がいれば、CDや写真集を出す候補者もいる。しかも、すごく真面目な写真集かと思いきや、なぜか中に1枚だけコスプレ写真が入ってたりもするんです。
また、選挙本部には若いカップルがデートで遊びに来て、ソファでキスしてたりもします(笑)。候補者の等身大フィギュアが飾ってあったり風船で埋め尽くされた部屋があったり、テーマパークのようになっているんですよ。
各国の選挙を知ると、日本に見習ってほしい部分が多々見えてきますね。たとえば日本は売名行為を防ぐために、国会議員や都道府県知事に立候補するのに300万円もの供託金が必要ですが、これが他国と比べると飛び抜けて高い。フランス、ドイツ、イタリアは供託金制度がないですし、制度がある国でも数万円のところが多いんです。
それと、日本は選挙の告示後の活動制限が厳しすぎますよね。ホームページの更新がNGになるなど、選挙期間中になるほど候補者の情報が得にくくなってしまう。これじゃあせっかく政治に興味を持った人がいたとしても、その興味が薄れてしまいますよ。
粛々と行うのはいいですが、それで投票率が低くては意味がない。スペインのカタールニャ州では裸の男女が闊歩する選挙CMがありましたが、有権者が選挙に関心を持ってくれるのであれば、日本でもそういうエロCMを作ってみたらいいと思いますよ。
【畠山理仁氏】
’73年、愛知県生まれ。興味テーマは政治家と選挙。米大統領選、ロシア大統領選、台湾総統選などを取材。著書『記者会見ゲリラ戦記』
取材・文/石島律子 漆原直行 昌谷大介
― [世界の選挙]ビックリ!白書【12】 ―
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