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「養子縁組」制度を利用した恐るべき保険金殺人

現役ヤクザが、世間を震撼させた重大犯罪の裏側を解説。凶悪な手口も実は“杜撰”。殺しのプロが見たものとは―― ◆養子縁組の保険金殺人はいまや“常套手段”  1月4日に、熊本市で約3億円の保険をかけられた男性が軽乗用車とダンプカーで轢かれて殺害されるという荒っぽい事件が起きた。県警は死亡した男性の義母・月足恵子容疑者と暴力団幹部ら2人をそれぞれ逮捕し、暴力団幹部ら2人は容疑を認めているというが、月足容疑者は依然否認している。 イメージ ヤクザが殺人を認め、一般女性が否認するという違和感に、現役ヤクザのA氏は、「懲役の話がまとまってなかったのでは」と、読み解く。 「ひき逃げなら長くても懲役5年ほど。それくらいで大金を得られるならと引き受けるヤクザも多いのだが、カネの分配でこじれたんだろう」  実はヤクザにはこうした保険金目当ての殺しの依頼も多いのだという。A氏が続ける。 「保険金を欲張りすぎたのもいけなかった。3億も掛けたら疑われるに決まってるだろ。普通は2000万円程度にとどめておくのが“常識”だよ」  もっとも、2000万円程度でコトは済まされない。本来は依頼者に養子縁組を持ちかけ、その先にある土地や建物など財産を狙うのが常套手段だと、A氏は言う。 「殺害の条件に、保険金の分配を確実にするためと、養子縁組を挙げる。無知な素人ならまず快諾する。その後に保険金を掛け、(ヤクザの)出頭要員に殺させる。養子縁組すれば保険金の受取人になっても保険会社や警察から疑われないし、資産を蝕むのも簡単。遺産問題を危惧する依頼者や親族が当然、離縁を迫ってくるから、その手切れ金を要求するんだよ。依頼者を殺せば、その保険金までせしめることができるしな」  尼崎の連続変死事件でも、ある家族の四男の嫁を離婚させ、別の兄弟と結婚させるという類似の手口があった。角田美代子は、もともとの血縁や姻戚関係を解体する過程で金品をせしめていたようなのである。  尼崎事件では、同居していた義妹の夫(当時51歳)が平成17年、美代子ら親族で沖縄県を旅行中、恩納村の観光名所・万座毛で、崖から約30m下の岩場に転落して死亡している。A氏の言葉どおり、沖縄県警は当時、親族らの後ろにいた義妹の夫が、崖で足を滑らせたのが原因と判断していた。転落死から間もなく義妹の夫の弟(54歳)が行方不明となり、妻だった三枝子被告らには多額の保険金が入った。  義妹の夫は平成12年、尼崎市内のマンションを購入し、美代子被告らと同居していたが、死亡後は三枝子被告が相続している。 「角田のように些細なキッカケを糸口に気弱なターゲットに近づくことはある。資産のある老人などに近づき、配下の人間に嫌がらせをさせ、解決にはお金や養子縁組が必要だと迫り、自作自演で解決。資産をむしり取るのだ」  現役ヤクザによる考察、聞けば、実に緻密で、的を射ていると思うのは、我々だけではないだろう。 【A氏】 某広域暴力団、三次団体幹部。長年の刑務所生活から角田美代子の自殺を解説する 取材・文/高木瑞穂 写真/産経新聞社 ― 最新犯罪の[殺しの手口]を科学する【3】 ―
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