逮捕、訴訟…プロ野球私設応援団のディープすぎる日常
5月26日のロッテ戦(横浜)に1-4で敗れたDeNA。30日付けの東京スポーツによると、中畑清監督はロッテの応援団に圧倒されたと語っていたそうだが、確かにこのロッテ応援団の統制が取れた応援は凄まじかった。
プロ野球なら応援団(私設応援団)、サッカーならサポーターと呼ばれるコアな人々がいる。ホームだろうがアウェイだろうが、試合があれば駆けつけて最前列に陣取って、旗を振り、太鼓を叩き、時にはラッパを吹いて、声を涸らして応援する。
だが、野球、サッカーを観るために球場やスタジアムへ行ったことがある人は皆思うはずだ、彼らはいったい何者なのかと……。そこで今回は、ほとんどメディアで取り上げられることのない応援団という人々に焦点を当ててみたい。
⇒【前編】どうやって応援団員になるのか?
◆応援団のディープすぎる日常
ではここからはもう少し突っ込んだ話を聞いてみたいと思う。応援団というと、ちょっと強面な人たち、けんかっ早いなどもイメージもある。こうしたイメージは果たして本当なのだろうか。
「今でこそ応援団もNPBに許可を受けたり、暴排条例に則ったりしてまともだけど、2002年くらいまでは、まぁ、その辺は想像の通り、イメージ通りの世界だったね。だってさ、中には『○○一家』とかね。名前が完全にその筋じゃないですか。全身に刺青が入ってるから長袖の団長がいるところとか、サラシを巻いて包丁を刺してきた団員がいたところなんてのもあったね。ここまでくると、何しに球場来てるのかわかんなくなる(笑)」
今はもう当時のような荒くれ者の集まり的な応援団は影を潜め、NPBから特別応援許可がおりた応援団が中心になったが、小岩さんは当時を懐かしそうに語る。
「とにかくセ・リーグの応援団はおっかない印象が強かった。強面的な意味ではなく、いろんな意味でぶっ飛んでたのがロッテ。サッカーの応援スタイルとか取り入れて、野球ファンの度肝を抜いたりしてた。まぁ、川崎球場時代からぶっ飛んでたからね、あそこは。うどん食いながら応援してたとか、試合始まっても応援団がいないと思ったら寝てたとかね。嘘かホントか、いろんな“伝説”があった。ある意味、プロ野球の応援団の常識を覆し続けていたと思う。だって名前が川崎応援青年団だよ。なんかすごいパワーを感じるよね」
ほかにもこうした応援団の荒くれ者の話は尽きない。
「1998年に横浜が優勝したんだけど、その時に横浜の某応援団のヤツが『優勝したらウチのOBがみんな日本シリーズに来るって言ってるんだけど、その人含めて何人かが指名手配だから、日本シリーズは張り込みされる』って真顔で言ってたのは笑えなかった。あと、某有名選手の後援会の連中がお揃いのハッピ作って応援団の真似事を始めたんだよ。一応、応援団って作る時に同じ球団の応援団はもとより、他球団の応援団にも話を付けなきゃいかんのだけど、当時の人気にあやかったのか、そんなの関係ねぇ!ってやっちゃったの。で、とある応援団の偉い人が中に入って『まぁまぁ、素人さんが勝手にやってもらうと、こちらも困りますから』って話をしたら、『関係ねぇだろ!』ってやっちゃったもんだから大変。襲撃しちゃったんだよね」
外野の自由席の無許可販売や違法な寄付金を募っていたなどの不祥事で、応援団関係者が逮捕される事態が相次いで起きたのが2002~2006年頃。さらには暴力団との関係を理由に球場内での応援活動を禁止され、訴訟に発展した応援団まであった。この2006年前後はプロ野球の応援団にとっては大きな転換期になったといえよう。
小岩さんによるとこれらの事件は「氷山の一角」だったという。日本シリーズ出場チームがチケットを高額で転売するダフ行為などは日常茶飯事だったという。
そんな中、あるとき他球団の応援団と揉めて、暴力沙汰に巻き込まれそうになったのをきっかけに応援団をやめる決意をした小岩さん。
「今はNPBに登録して、許可された人だけが旗を振ったりラッパ吹いたりできるようになって、昔みたいに好き勝手にやるのは許されなくなった。暴力団とか違法行為はよくないけど、ちょっとがんじがらめにやり過ぎてるとも思う。まぁ、あの頃が牧歌的すぎたっていえば、その通りなんだけどね(苦笑)。でも、やっぱ日本の野球には応援団はいてほしいなぁ~。なんでもかんでもメジャーに倣えってのはどうかと思う。鳴り物応援は日本の野球の文化だと誇ってもいいんじゃないかな」
<取材・文/日刊SPA!野球取材班>
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