更新日:2013年06月17日 09:11
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3本目の矢を外したアベノミクス。本当の「成長戦略」とは?

6月5日、安倍晋三首相は都内で講演し、「成長戦略第3弾」を発表した。しかし、その内容は具体性を欠き、期待外れだった。この日の日経平均株価は、首相の表明を受けさらに下落し、518円安となったのだ。 ◆アベノミクスの3本目の矢「成長戦略」は期待外れだった!? 止まらない株価の下落 (人気ブログ「金融日記」管理人 藤沢数希氏)  ここまで異次元の金融緩和などで、国内外の投資家を大いに盛り上げてくれたアベノミクスであるが、3本目の矢「成長戦略」も放たれた。しかし、これが大いに期待外れであった。5日の安倍首相のスピーチでは、「規制改革こそ、成長戦略の一丁目一番地」「国家戦略特区」など、曖昧な言葉が並んでいるだけで、戦略特区で法人税を下げることも、カジノ解禁などを盛り込むリゾート開発特区にも、原発の再稼働にも、まったく言及されなかった。具体的な話は一般大衆薬のネット販売を解禁することぐらいで、「行き過ぎた金融資本主義はリーマン・ショックで挫折した」というお決まりの文句も忘れなかった。  これまで日本は総理大臣が代わるごとに、過去7年間で6回の成長戦略が発表され、これで7回目である。それらのすべてが日本の経済成長率を上げられなかった。効果がなかったのには明白な理由がある。それは政府が主導して、特定の産業に補助金を与えたりするものだったからだ。そもそも政府の官僚に将来の成長産業を見ぬくことはできないし、政府が安易に特定産業を優遇すると、企業は世界の消費者にどれだけいいモノやサービスを提供しようと競うのではなく、いかに政府に取り入って補助金を獲得するかの活動を始めてしまう。これでは日本企業が世界との競争に勝てない。 ◆税率を下げたら税収が増えたケースも  実は、成長戦略が何もないのが一番の成長戦略なのである。必要な成長戦略は、リスクを取って成功した人に報いる税制と、民間企業が自由に競争するための大胆な規制緩和である。安倍内閣は、産業競争力会議に小泉内閣のブレーンだった竹中平蔵氏を招くなど、こちらの方向の成長戦略を打ち出すと期待され、実際に、戦略特区などで大胆な法人税減税や規制緩和をすると発表していたのだが、どうやら尻すぼみになりそうだと市場に受け取られてしまった。 ⇒【後編】日本がアジアで一人勝ちするための「成長戦略」とは?に続く
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藤沢数希氏【藤沢数希氏】 欧米の研究機関にて計算科学、理論物理学の分野で博士号を取得。その後、外資系投資銀行に転身。主宰するブログ「金融日記」は月間100万PV、ツイッターのフォロワーは8万人に及ぶ。最新刊『外資系金融の終わり』(ダイヤモンド社)が発売中
物理学研究者、投資銀行クオンツ・トレーダー職等を経て、作家・投資家。香港在住。著書に『外資系金融の終わり』『僕は愛を証明しようと思う』『コスパで考える学歴攻略法』などがある
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