更新日:2013年10月31日 09:08
スポーツ

【MLB不正投球疑惑】否定されてもファンの間では疑惑の声が拡散、炎上

 レッドソックスとカージナルスによる今季のワールドシリーズが、米国のテレビ中継でも高視聴率を叩きだし注目を集めている。不況の影響で観客減やレギュラーシーズンの視聴率低下などが指摘されていたメジャーリーグにとっては、久しぶりに明るい話題だ。だがその陰で、実はあまり明るくない話題について米国野球ファンの間で激しい論争が起こっているのをご存知だろうか。 ⇒【前編】「マイナー選手のツイートで噴出」はこちら https://nikkan-spa.jp/528512
Bullfrog

最初の不正投球疑惑の火種になった日焼け止めのBullfrog

 ワールドシリーズ第1戦で好投したレッドソックスの先発投手ジョン・レスターが、グローブに何か不自然なものを付着させ不正投球していたという疑惑。当事者や球団、大リーグ機構は即座にこの疑惑を否定したが、問題ないといえばいうほどファンがネット上で騒ぎ始めた。  米ヤフースポーツ電子版の有名スポーツジャーナリスト、ジェフ・パッサン記者が「ジョン・レスターは新たに“何の問題もない”問題に巻き込まれた投手」という記事で「投手の90%はボールの握りを向上するために何らかの物質を使っている。これは不正ではないし、不正だと騒ぐのは本物の不正があったときにした方がいい」とレスターを完全擁護する記事を書いたのだが、この記事に読者のコメントが何と1000以上も付いた。米ヤフーのメジャー記事に付くコメントは通常数百程度なので、これはもう「炎上状態」といっていい。  コメントの内容も、同記者を批判するものがほとんどだった。 「もしその物質を使うことが問題ないのであれば、なぜ物質をグローブの内側に塗って隠し、こっそりと利き腕の指で触るのか。握りを向上させるために物質を使う行為が認められているのなら、なぜオープンにやらないのか」 「パッサンは本気で書いているのか。不正の可能性があるものを無視しろと? ではステロイドを使用することもOKなんだね?」 「もしその物質が不正でなければ、レスターは『よくわからない。鼻くそのように見える』と答える代わりに、何であるかを正直に言うはずではないか」 「レスターは明らかに不正をしているし、これは大きな問題だと思うね。パッサンは最も偏向した記事を書く記者の1人だと思うね」 「06年のワールドシリーズでカージナルスがタイガースと戦ったとき、タイガースのケニー・ロジャース投手が帽子のつばの下に松ヤニを付けていた疑いが出て、カージナルスもメディアも大きな問題にしていた。なぜ今回は大きな問題にしないのか」 「ファンは最高のチームの試合を観るために大金を払っているのだから、選手により高いモラルを求める」 「ほとんどの投手がなんらかの物質を使っているというけれど、カージナルスのエース、ウエインライト投手が何かを使っているのを見たことがあるか?」  こうして厳しい意見が並ぶのは、レッドソックスの不正投球疑惑が持ち上がったのは今季、これが2度目ということもあるだろう。  1度目は5月、クレイ・バックホルツ投手がブルージェイズ戦でBullFrogというブランドの日焼け止めとロージンを混ぜたものを腕の内側に塗りこみ、指につけていたという疑惑が持ち上がったときだ。最初に指摘したのが元投手でブルージェイズの試合解説者であるダーク・ヘイハート氏だったのだが、結局このときも疑惑報道はされたがバックホルツは「ロージンをつけていただけ」と否定し大きな問題には発展しなかった。  BullFrogの日焼け止めというのはメジャーでは有名で、塗るとかなりベトつくため滑り止めとして大変な効果を発揮するという。さらにこれをロージンと混ぜるとボールが指先にくっつくほどの威力が出るとされている。ボールが指先にくっつくということは、球離れがその分遅くなり、ボールの変化の具合に影響を及ぼすことにもなる。  実はレッドソックスがレイズと対戦した地区シリーズで、このBullFrog日焼け止めのボトルがレッドソックスのベンチの棚の中に置いてあるところをFOXテレビの中継カメラがとらえ、テレビ画面にはっきりと映し出されていた。その試合は敵地のドーム球場で行われたナイターで、日焼け止めを使う必要のないシチュエーションだったため、このときも一部のファンの間で話題になっていた。因みに前出のパッサン記者も、5月のバックホルツの疑惑が出た時点では投手がBullFrogとロージンの混合物を使うことに関して問題提起をしており、地区シリーズでレッドソックスのベンチにBullFrogのボトルがあることをいち早くツイッターで指摘していた。だがレスターの疑惑が持ち上がったときには、レスターを徹底的に擁護する側に回っている。  結局、不正投球というのは、対戦相手のチームがクレームをつけるか試合中の審判が申し立てしなければ問題にはならず、ファンの間の論争だけで終わってしまう。ファンの中には「かつて他の投手が同じように異物を使った不正投球で罰せられたことがある。メジャーリーグベースボールがすべての選手を平等し処分しないことは悲しいことだ」と嘆きの声も上がっており、遺恨の残る出来事となった。同時に、レッドソックスが球界である種の絶大なパワーを持っていることも浮き彫りとなった出来事だったといえるだろう。  個人的には、滑り止めとしてBullFrogを使用するのは許容範囲だとしても、BullFrogとロージンを混ぜ合わせた物質を使うのは許容範囲を超えていると感じる。それでも何もいわずにレッドソックスを倒しワールドシリーズで有利な戦いをしているカージナルスは、流石といわざるを得ない。  果たしてこの不正投球疑惑を巡る騒動、どのような決着を見せるのだろうか? <取材・文/水次祥子>
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