雑学

サービスマンに聞く「トラブル客の対処法」

「ホスピタリティ」という言葉が一般的になり、サービスの内容と同時に、その質も問われるようになっている。が、その一方で「お客様は神様」という言葉を曲解した、困ったちゃんな客も少なくない。ツアー添乗員、美容院、携帯電話販売店マネジャー……いずれも“いろいろなお客様”と対峙する仕事。日々、何を思い、お客様と接しているのか? トホホな客の対処法は?

客<座談会>「サービスマン」は“演技者”だ!

理美容室経営・春岡浩二さん(仮名):トラブルになるお客さんは、一見さんやモノだけを買いに来た方に多いんですが、ひとつ特徴的なのは思い込みの激しさですね。自分の基準がすべてだと思い込んでしまっているような。

ツアー添乗員・水野栄吉さん(仮名):一概には言えませんが、高齢者から団塊世代によく見られる気がします。

春岡:ウチの美容院ではかつらも販売しているんですが、「10日から2週間で入荷します」と申し上げて、フィッティングの予約日も決めていたのですが、その月の10日にいきなりお見えになって。結局、「そっちのミスで二度手間になったのだから安くして」と。

水野:どうされたんですか?

春岡:とにかく謝って謝って落ち着いていただいて。こちらが赤字にならない程度の値引きをして差し上げました。そうなると、以前、行ってた美容院へのグチが始まって。いろいろ髪の毛にご不満があったのがわかったんです。

携帯電話販売店マネジャー・岡本 悟さん(仮名):ちょっとしたグチからお客様のニーズを引き出すこともできますよね。お客様が携帯電話に求めていることや、それに付随するアクセサリーやコンテンツが見いだせれば、契約や購入に結びつくこともある。グチへの共感は立派な営業手法です。

水野:ある程度の年齢、特に女性はいろいろストレスがありますからね。美容院もそうだと思うんですが、私たちの旅行業も“非日常”をご提供する仕事。気持ちとしては、日頃の憂さや不満はここで吐き出してください、グチも聞きますという気持ちでいます。

春岡:ただ、一方で、友達のような、なあなあの関係にはならず、そして、できないものはできないと言うことも大事だなと思いますね。その上で、自分ができることを提案するのがサービスだと思っています。

水野:ガイドって、比較される商売なんです。「前の人のほうが詳しかった」とか、「あのバスは若いお姉ちゃんなのに!」とか(笑)。そうなると、私にできることといえば、自分の“演出”を極めるしかないと思うようになりましたね。

春岡:例えば、どういうことですか?

水野:以前あったのは、あるツアーに不倫と思しきカップルが乗車したんですね。その際、一般の周遊バスへ乗り換えることになり、そのカップルが並んでお座りになれなかったんです。すると男性が烈火の如くお怒りになって。

春岡:一時も離れたくなかったのか、あるいは特別扱いしてほしかったのか。

水野:王様タイプの男性ではありました。並んだお席を融通することができない状態でしたから、謝るしかない。そのとき私がイメージしたのは、“部活で理不尽を言う先輩に従う後輩”。ひたすら「申し訳ございません!」を繰り返しました。ただ、バス中からそのお客様が見える場所に立って、大きな声で謝罪し、ほかのお客様からのあきれた視線がすべて彼に注がれるよう計算はしましたけど(笑)。

岡本:お客様が客観的に自分を見られるように落ち着かせる手段として、第三者の目はありますね。激昂されているときは、基本的に話は伝わりませんから。まずは、クールダウンが必要。

春岡:でも、考えようによってはかわいらしい人ですよね。よろしくはないけれど、彼女を楽しませたいという気持ちがそもそもあったわけですから。

水野:内心は、「こんな男と一刻も早く別れろ!」って思ってましたけど(笑)。でも、結局、「あいつ、がんばってるな」という姿勢は伝わったんだとは思います。私の場合、一度に大勢のお客様を相手にしますから、1:1ではなく、1:多数。その多数に向けて「がんばってる演出」をするようには心がけてますね。

⇒【後編】に続く http://nikkan-spa.jp/600845

●水野栄吉さん(仮名)
主に国内旅行のツアー添乗員やガイドを務めるベテランサービスマン。45歳。他社よりツアー内容が劣っているときは「ウチはこうですが~」と先にネガティブ要素を出してクレームを制する「先手必勝法」など独自に対処法を編み出してきた

●春岡浩二さん(仮名)
東京郊外で理美容室を経営する36歳。客層は地元の中高年が中心だが、髪のことを思いやったアドバイス、極力お客の要望に応える姿勢にリピーターも多い。とはいえ、その優しさにつけ込まれ客にお金を貸して戻ってこなかった苦い経験も

●岡本 悟さん(仮名)
携帯電話販売店マネジャー。35歳。広告業界からの転職組。携帯業界はキャリアからの決まりで窓口ではどうしようもできないことも多く、お客様の怒りをぶつけられることも多い。若いスタッフのモチベーションをどう高めるかが目下の課題

イラスト/こまつめ組
― 私が遭遇した[トホホな客]図鑑【5】 ―

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