“男女の交渉”節電の歌舞伎町で活発に
その先のホテル街にも、女たちが佇んでいた。自動販売機の陰に、消灯している防犯灯の下に、「ここに座り込まないでください」と書いた看板を掲げる病院の植木の陰に……総勢8人もいる! こちらは単独で、20代半ばから30代が多い。明らかに男と思われる「女」もいたが、ホテルのネオンがある分、判別はしやすい。
ここでも道行く男たちが声をかけては離れる。粘り強い交渉を試みる猛者もいる。さきほどの通りの男が「滞在形」だとすれば、こちらは「短期決戦形」か。
公園の資材置き場の陰に佇んでいた女と目が合った。朴訥として地味目の女が記者の歩みを追っている。意を決して話しかけようとした瞬間、背後から声を掛けられた。
「お兄さん、あんなのよりもっといいコを紹介するよ」。驚いて振り向くと小柄な中年男性が笑っていた。「この辺のコは危ないよ、ホラ病気とか。同じ値段なら安全なほうがいいでしょ」。
聞けばこの中年男性はフリーの客引きだという。しかるべき場所からしかるべき女をしかるべき値段で斡旋すると力説する。客引きの力説ほど怖いものはない。
「ココは女のコが増えてるみたいだけど、サービスは悪いよ。悪いこと言わないからウチのコにしときな、駅前の中国マッサージとも違って、きっちり仕事するからさ!」
「30代、巨乳、サービス満点」としきりに耳打ちする中年男性に辟易していると、パトカーの赤色灯が横切った。女たちは暗がりに身を潜め、男性は何事もなかったように記者の元を離れていった。
規制、再開発で「明るく健全」な街を目指す歌舞伎町。しかしその光が強いほど、闇は濃さを増している。
取材・文・撮影/風俗(かぜ)を読む取材班
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