韓国のネット配信サービス「アフリカTV」が日本本格始動 年収1千万円以上を稼ぐ配信者も
―[アフリカTV]―
Youtubeの広告収入のみで生計を立てる人「ユーチューバー」をはじめ、ネットで儲けて生計を立てる人が増えている。Youtubeだけでなく、動画サービス「niconico」では、有料チャンネルを一部ユーザーにも開放したほか、「クリエイター奨励プログラム」で人気コンテンツの投稿者に対してポイント・現金による還元システムを整備し、1000万円を超える収入を得る人も出ているとか。
日本でも、ネットで生計を立てる人の存在が目立ってきているが、お隣の韓国では、ネット配信者がタレント並のスターとして存在感を高めているという。その舞台となっているのは、「アフリカTV」という今年日本にも上陸したサービスだ。
「アフリカTV」は、2006年3月にスタートしたネット配信サービスで、日本でいうニコニコ生放送(同年12月スタート)のようなサービスだ。違いは、無料で時間制限なく放送ができることや、配信者に対してより直接的な利益をもたらすという点。「星風船」と呼ばれるシステムが、配信者および運営に大きな利益をもたらす中核を担っており、人気配信者(BJ=ブロードキャストジョッキー)のなかには、年収数千万円という人も多いという。
韓国では地上波、ケーブルテレビに次ぐ「第3のメディア」として注目されているというが、ニコニコ生放送をはじめ、多くのネット配信サービスが存在する日本でも、韓国同様の存在感を示すことができるのか?
◆収益を生み出す完璧な生態系?
課金機能の「星風船」が4月下旬に実装され、本格始動となった日本版のアフリカTV。日本法人の担当者は、既存サービスとの差別化ポイントを語る。
「ユーザーはBJの放送を楽しみ、BJは放送によって星風船で収益を上げ、運営である我々は、広告スキップなど視聴が便利になる『有料会員』や配信者の人気を上げる『ステッカーアイテム』や換金アイテムである『星風船』の販売で利益を上げる。この緻密に練られた生態系で日本に合う形で広めていければと思っています」(アフリカTV担当者、以下同)
視聴者は、配信者を応援するためにステッカーアイテムを使って露出増などの応援をし、星風船(現金)をプレゼントする。星風船は1個10円で、10個(100円)から100個などまとめて購入し、任意の個数をプレゼントできるのだが、人気BJの番組では「1000個プレゼントしました!」といった表示も珍しくない。一瞬にして1万円が投げ込まれているのだ。この星風船は一定量が貯まると換金可能で、40%の手数料は運営の収益となる(人気BJは手数料30%などクラスによって異なる)。
「数千万円稼ぐ有名BJたちですが、アフリカTVをステップに、芸能界に行こうという人は多くありません。こっちの方が稼げるからです。また、BJにもランクがありますが、視聴者側にランクがあることも特徴です。視聴者は星風船のプレゼント数などでランキング付けされ、TOP10に入っていると、視聴開始時に『熱狂的ファン●●さんが入場しました』と表示されるなど、よりBJと親密になれる仕組みとなっています」
こういった仕組みがかつては、批判に晒されたこともある。
「2010年くらいには、若い女性が過度な露出で星風船を集めているとして社会問題となったこともありました。しかし、弊社はこうした問題を受けて、性的あるいは暴力的な表現に対して細かいガイドラインを設置し、規定に準じて一貫した対応を取るようにしております。ガイドラインでは、胸のカップごとに谷間の出方について露出ラインを厳密に規定するなど変わったものもあります」
◆美女と勉強、食事風景、スポーツ実況などが人気
日本ではゲーム実況者や「歌ってみた」「踊ってみた」などのパフォーマーが人気だが、韓国のアフリカTVではどのような人が人気を集めているのだろうか?
「BJが行う放送では、視聴者に何かを教える『教育放送』と呼ばれる番組が人気です。英語を教える美人BJは、大企業の部長の年収2人分ほど稼いでいます。部屋での食事風景を配信する『モクバン放送』では、都内の一戸建てを買えるくらい稼ぐ人もいます。韓国は出前が充実していて、どんなものでも出前でとれます」
これらは、BJから自然発生的に生まれた放送スタイルだというが、運営から素材を提供して、仕掛けたような放送スタイルもある。
「正式に版権を買ったスポーツ放送を配信しているのですが、実況ありのものと無しのもの2種類を用意しています。視聴者は、オリジナルの実況付きの動画を楽しむことができますし、実況なしで観戦することもできます。さらに、BJは実況なしの動画をダウンロードし、自分で実況を付けて配信することもできます。テレビなどの中立的な実況とは一味違う、BJの趣味に偏った個性的な実況付きのスポーツ観戦は、新しい観戦スタイルとして人気です」
⇒【後編】に続く 「アフリカTV」で日本人女子大生がアイドル化!?
<取材・文/林健太 写真提供/アフリカTV>
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