イスラエル軍地上侵攻で緊急事態、パレスチナ・ガザからのSOS
日本国際ボランティアセンター(JVC)エルサレム事務所に駐在し、パレスチナ・ガザ地区への支援活動を続けてきた金子由佳さんがガザ地区内のスタッフに電話をかけると、悲痛な声が聞こえた。
声の主は、ガザ地区北部ベイト・ハヌーンに住むJVC現地スタッフのアマルさん。電話越しにも大きな銃声が聞こえる。
「私は家族と一緒に自宅に留まっていますが、家のすぐ近くに戦車の砲弾が飛んできました。子どもの泣き声が至るところから聞こえます。あちこちで爆発が起こっていて、診療クリニックにはスタッフも患者も行けません。イスラエル軍はまだ街には入ってきていませんが、昨夜から今朝まで催涙弾の匂いがしており、イスラエル軍が近くに来ているのを感じています。彼らは硫化水素のガスも撃っているらしく、硫黄の匂いもします。発電所も破壊されたため、昨夜から現在(18日午後3時)まで電気も来ていません」(アマルさん)
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7月21日付の国連の発表によると、イスラエル軍の空爆・地上侵攻後によるパレスチナの民間人死者は364人(うち子ども121人)、負傷者3504人(うち子ども1100人、女性608人)にものぼる。イスラエルの大規模侵攻は2009年以来のことで、今後もパレスチナ人の死傷者が多数出ることが予想される。
金子さんはガザ地区内のスタッフと連絡をとろうとしているが、「電気が通ってきていないので、携帯電話の充電すら難しい状況」だという。
「現在のガザには、まず水がありません。通常、飲料水は水道業者から購入するのですが、イスラエル軍の攻撃で供給が止まっています。水道水の供給も不安定で、塩水が混じっていたり汚れたりしています。しかし、今はその水を飲まなければ生きていけない。国連は『約60万人分の飲料水が確保できない状況にある』と発表しています。食料もほとんどの物流が止まっています。水、食料、ガス、電気、医療、すべてが不足しているのです。
すでにガザ地区の4割が戦闘地域になっています。イスラエルの地上軍の侵攻により、戦闘地域が急激に広がっているのです。すでに避難民の数は10万人を超えています。イスラエル軍は民間人に避難を呼びかけるビラを配布していますが、避難先の国連施設はすで避難民であふれています。いったいどこに逃げればいいと言うのでしょうか」(金子さん)
現在、金子さんらガザ地区外のNGOスタッフは地区内に入れないが、事態は一刻をも争う状況にある。そこで、JVCは地区内の団体の協力を得て緊急支援を開始した。
「現地団体アルド・エル・インサーンと共同で、ガザ市とハン・ユニス市にある2つの病院で必要な物資の配布(ドライフードなど保存の効く食料、医薬品)を開始します。また、負傷者の治療も行います」(金子さん)
金子さんは、このプロジェクトに参加し、現地病院で治療にあたっているアドナン院長からのメールを見せてくれた。
「日本という偉大な国の友人に感謝いたします。ですが、どうか心配なさらないでください、私たちはとても高いモチベーションで支援活動をしています。私たちは世界の方々が私たちの生命に尊厳があることに気づき、停戦を呼びかけてくれると信じています。日本の友人たち、私たちのために心を割いてくださって、本当にありがとうございます」(アドナン院長)
この支援は、現在のガザ地区住民がいちばん必要としているものだ。「でも」と金子さんは言う。
「もっと必要なのは、一刻も早く停戦がなされることだと思うのです」
※日本国際ボランティアセンター(JVC)はガザへの救急支援について募金を募集している。クレジットカードやコンビニ振込で募金ができる。ただし、現地の状況が流動的なため支援内容が変わる可能性があるとしている。詳しくはJVCウェブサイトにて。http://www.ngo-jvc.net/jp/projects/palestine/2014-gazaemergency
<取材・文/白川愚童 写真/日本国際ボランティアセンター>
「ガザ地区の状況は悲惨そのものです。このことを世界に伝えてください!」
イスラエル軍の地上部隊の本格侵攻が始まった翌日の7月18日。
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