エンタメ

“ザ・ロック”ドウェイン・ジョンソンの最新主演作『ヘラクレス』――「フミ斎藤のプロレス講座」第9回

「英雄伝説最強、肉食系アクション炸裂!」
「神が恐れる唯一の人間、彼の名は“ヘラクレス”」
「極限のパワーですべての魔物を撃破!」
「マネー・メイキング・スターNo.1」
「ハリウッドスター・パワーランキングNo.1」
「ハリウッド史上最強の男が、ついにアクションを進化させた!」


 ハリウッド映画の宣伝コピーは、プロレス以上にプロレス的なのだ。というか、プロレス団体やプロレス関連のメディアだっていまどきここまでギラギラのコピーは使わない。それとも、映画関係者がプロレス的な音感をイメージするとやっぱりこういう感じになるのだろうか。WWEスーパースターのロック様ことドウェイン・ジョンソンの最新主演作『ヘラクレス』(配給&宣伝:パラマウント ピクチャーズ ジャパン)が10月24日から全国ロードショー公開される。

HERCULES

映画『ヘラクレス』より (C)2014 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 全能の神ゼウスと人間の女性のあいだに生れたヘラクレスは、恐るべき怪物たちと闘う〈12の難行〉を成しとげ、生ける伝説となる。時は流れ、紀元前358年。ヘラクレスは彼を慕う5人の勇者たちを従え、金のために闘う傭兵となってギリシャ諸国をさまよっていた。トラキア王国のコティス王から国の救済を頼まれたヘラクレス軍団は、反乱軍を倒すためにベッシへと向かうが、それはヘラクレスを待ち受ける巨大な陰謀とワナのプロローグに過ぎなかった――。

 これが映画『ヘラクレス』のおおまかなストーリーだ。マスメディア向けの資料/プロダクション・ノーツにはこう記されている。

=================

“誰も見たことのない全く新しいヘラクレスの誕生!”

 ヘラクレス、不滅の伝説――偉大な業績で知られる勇敢な半神半人のヘラクレスが、ブレット・ラトナー監督と、ハリウッドを代表するアクション・スターであるドウェイン・ジョンソンによって、新たなキャラクターとして21世紀に蘇る。

「私たちのヘラクレスが今までと違う点は、ギリシャの神の子だという事実を否定してきた普通の人間だということだ」とラトナーは説明する。「すべての伝説は、真実で始まる。私が脚本を読んでぶっ飛んだのは、リアリティに根差した物語だったからだ。それこそが、私がスクリーンで表現したいと思っていたことだ」

 ヘラクレスに肉体と機知を与え、磁石のように人を惹きつける魅力を表現できる俳優は、ドウェイン・ジョンソンしかいないことは明らかだった。ジョンソンは、ヘラクレスの特徴のすべてを持ち合わせているだけでなく、子供の頃からこの役を演じることをずっと夢見てきた。「ドウェインはヘラクレスを演じるために生まれてきた」とラトナーは断言する。ジョンソンはジョークをまじえて振り返る。「私はヘラクレスに心酔して育った。ハリウッドに入ってすぐに提案した最初のプロジェクトもヘラクレスだった。――それに、実はずっと腰巻をつけてみたいと思っていたんだ(笑)」。

 ジョンソンは、ヘラクレスの不安定な感情を表現することにも意欲的だった。彼は、何のためにヒーローになるのか、自分が本当は何者なのかと思い悩む。そしてその過程で人との絆に気づいていく。「彼にとって、自分がゼウスの息子かどうかということは問題ではない」とジョンソンは言う。「唯一の問題は、過去の過ちを正すことだ。自分がより良い人間になれると信じられるように、仲間たちが後押ししてくれるんだ」


=================

 ロック、というよりもドウェイン・ジョンソンは、あまりにもビッグな存在になり過ぎてプロレスのリングからはみ出してハリウッドのビッグ・スクリーンへと巣立っていった突然変異のスーパースターだった。レスリングのセンスそのものもすごかったが、おしゃべりの才能もまたケタ外れで、WWEのリングでは数かずのオリジナルのキャッチフレーズを発明した。

 いちばんポピュラーなのは“イフ・ユー・スメル・ホワット・ザ・ロック・イズ・クッキング If you smell what the Rock is cooking”で、これは和訳がひじょうにむずかしいフレーズだった。直訳すると“ロック様がクッキングしているものの香りをかぐことができるか”だが、これではなんのことかさっぱりわからない。ここでいうクッキングは料理をすることではなくて、熱をこめて元気に行動すること、いままさに起きていること、ガンガンいくこと、大暴れするといった意味で、ニュアンスとしては「ロック様のガンガンをビンビン感じているか?」「ロック様の魂の叫びが聞こえるか」といった感じになる。WWEの日本語版放送の字幕スーパーでは「ロック様の妙味を味わえ」となっていた。定番のキャッチフレーズはまだまだたくさんある。

ノー・ユア・ロール Know your role(and shut your mouth)”は「自分の役割を知れ(そして黙ってろ)」「身のほど知らずめ」「立場をわきまえろ」。

レイ・ザ・スマックダウン Layeth’the smack down”は「コテンパンにしてやる」。

キャンディー・アス Candy Ass”は「白人野郎」「ツルツルのケツ」。

ルーディー・プー Roody Poo”は「汚いフン野郎」。

ジャブローニ jabroni”は「とるに足らんないヤツ」「負け役野郎」。

 1972年、サンフランシスコ生まれのジョンソンが、父ロッキー・ジョンソンとパット・パターソンのコーチを受けてプロレスラーとしてデビューしたのは1995年で、WWEと専属契約を交わし“サバイバー・シリーズ”の大舞台に初登場したのが1996年11月。デビュー当時のリングネームはフレックス・カバーナで、WWEでは当初、父親のファーストネームと祖父ピーター・メイビアのラストネームをミックスしてロッキー・メイビアを名乗っていたが、ストリート系ヒールのキャラクターが定着してくるとニックネームだったザ・ロックがそのまま通称になった。

斎藤文彦

斎藤文彦

 WWEのTVショーの画面のなかにおさまっていた時代をロックの現役生活とすると、プロレスラーとしてのキャリアはわずか6年足らずだった。TVシリーズ『スター・トレック・ネクスト・ジェネレーション』(97年)にゲスト出演したことでその演技力を認められ『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』(01年)に起用され、そのスピンオフ作品『スコーピオン・キング』(02年)で初主演。『ランダウン ロッキング・ザ・アマゾン』(03年)、『ウォーキング・トール』(04年)で主役をつとめ、コメディー映画『Be Cool/ビー・クール』(05年)ではゲイの役を演じて評論家から高い評価を受けた。

 その後も『ゲーム・プラン』(07年・日本未公開)、『ゲット・スマート』(08年)、『ウィッチマウンテン/地図から消された山』(09年)、『Planet51』(09年・声)、『妖精ファイター』(10年・日本未公開)などに主演。『センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島』(12年)は3億2500万ドルの興行収益をあげる世界的な大ヒットとなった。

 昨年は『オーバードライヴ』、『G.I.ジョー バック2リベンジ』、『ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金』(日本未公開)、『ワイルド・スピードEURO MISSION』など主演作4作品の世界興収が合計1363億円を突破。米経済誌『フォーブス』が発表する“2013年に最も興行収益を稼いだ俳優”では、2位のロバート・ダウニーJrに大差をつけて堂々の1位に選ばれた。

 ギリシャ神話のヘラクレスの物語は、日本的な感覚でとらえるとするならば、いわゆるサムライ・ムービーの名作である黒沢明監督の『七人の侍』や『用心棒』とよく似た設定と考えるとわかりやすいかもしれない。かんたんにいえば、ヘラクレスと5人の仲間たちが生身の肉体だけを武器に1000人の軍隊をやっつけてしまうおはなしである。

 3D/2Dの2バージョンでの公開となるが、できれば3D版で観ることをおすすめしたい。“ネメアのライオン”は武器がまったく通じない獅子。“レルネのヒュドラ”は9つの首を持つ巨大な水蛇。“エリュマントスの猪”は雪原に住む人食いイノシシ。ロック様、ではなくてドウェイン・ジョンソン演じるヘラクレスが3つの頭を持つ凶暴な犬“冥界の番犬ケルベロス”にスマックダウンをお見舞いするシーンでは、画面からモンスターが飛び出してくる。プロレスファンは、スクリーンのなかで大暴れするロック様になんともいえないなつかしさ、親近感をおぼえてしまうのである。

●『ヘラクレス』予告編
⇒【YouTube】http://youtu.be/3NkIlUH3INY

公式サイト: http://www.hercules-movie.jp/

文責/斎藤文彦 イラスト/おはつ

※斎藤文彦さんへの質問メールは、こちら(https://nikkan-spa.jp/inquiry)に! 件名に「フミ斎藤のプロレス講座」と書いたうえで、お送りください。
※このコラムは毎週更新します。次回は、10月7~8日頃に掲載予定!





おすすめ記事