雑学

“日曜日はプロレスの日”体感リポート――「フミ斎藤のプロレス講座」第6回

 先週のこのコラムで、毎週土曜、日曜にはプロレスの試合が日本じゅうでそれぞれ10~15興行くらい開催されている、というおはなしをしたので、さっそく日曜日のプロレスを体感してきた。昨日(9月7日)は全国16か所(男子10団体、女子6団体)で興行があったというが、地方の弱小インディー団体の興行を含めるとその数はもっと多いかもしれない。

斎藤文彦

斎藤文彦

 まず、お昼の12時からは東京・新木場の新木場1stRING(ファーストリング)で女子プロレスのスターダムSTARDOMを観戦。午前中から東京23区に大雨・洪水警報が出ていたのでお客さんの入りはどうなのかなと思っていたら、熱心なサポーター層にとってはそういうことはまったく関係ないらしい。それほど大きな会場ではないが、東京ベイエリアのプロレス専用アリーナとしてプロレスファンの聖地になりつつある新木場1stRINGはほぼ満員(285人=主催者発表)だった。

 日本の女子プロレス市場は現在、10団体(15グループ)といわれていて、スターダムはそのなかのいちばんの人気団体。秋の本場所“5★STAR GP2014”(ファイブスターグランプリ2014)を開催中で、出場全12選手がレッドスター、ブルースターの2ブロック=各6選手に分かれてシングルの総当たりリーグ戦をおこなっている。この日はレッドスターズ公式リーグ戦、ブルースターズ公式リーグ戦が各3試合ずつラインナップされた。同リーグ戦の優勝決定戦は9月23日(火・祝)に後楽園ホールでおこなわれる。

・高橋奈苗(たかはしななえ)
・木村響子(きむらきょうこ)
・世IV虎(よしこ)
・紫雷イオ(しらいいお)
・宝城カイリ(ほうじょうかいり)
・岩谷麻優(いわたにまゆ)
・彩羽匠(いろはたくみ)

 女子プロレスというジャンルにあまり興味がなくても、このクラスの選手たちは――メディアを読み解くための常識の範囲内として――顔と名前くらいはおぼえておくことをおすすめしたい。正午12時にスタートした興行は、途中で休けいをはさみ、全7試合が終了したのは午後2時半。試合終了後に主力選手たちが売店に立ってのグッズ即売会(買ったグッズにサインを入れてもらい、選手と記念撮影もできる)が約1時間おこなわれるのもこの団体の売りもののひとつだ。常連層の男性ファンにとっては、大会終了後のこのひとときが試合と同じくらい大切なワンシーンになっている。

 スターダムの新木場1stRING大会のあとは、新日本プロレスの千葉・東金アリーナ大会観戦のため千葉県東金市に移動。大会名は“Blue Justice V~青義降臨~”で、プロモーターは新日本プロレスの永田裕志。永田にとっては2年ぶりの地元凱旋興行だった。新日本プロレスはいわゆる業界最大手のメジャー団体である。

 あまり地方、地方というと東金のみなさんは気を悪くするかもしれないけれど、東金アリーナは、東京からクルマで1時間ちょっとの距離とは思えないようなどこまでも広がる田園風景のなかにいきなり場違いみたいな感じで出現する超近代的なシルバーメタリックの建物だった。地方都市にはこういうスポーツ施設がけっこうたくさんある。やっぱり、地方はクルマ社会なのだろう。アリーナのすぐ裏の野球場くらいのサイズのだだっ広い駐車場が“只今満車”になっていたのもまた地方興行ならではの景色だった。

 アリーナの入り口には“土足厳禁”という張り紙があって、係員が入場者ひとりひとりにクツを入れるビニール袋を配っていた。「クツ下で体育館のなかを歩くのか……」と思っていたら、売店では“Blue Justice”のロゴがプリントされた青いスリッパ(500円)を売っていたのでこれを購入した。この日しか手に入らない限定版の大会記念グッズというやつである。500円という値段は手ごろどころか、ものすごくお買い得なのだ。

 新日本プロレスの大河ドラマ的ストーリーでいうと、今大会は“Road to DESTRUCTION”(ロード・トゥ・ディストラクション)というシリーズ興行のなかのひとコマで、業界的な専門用語でいうならば――テレビ中継の収録がない地方興行――ハウスショーである。試合開始前にはリング上で東金市長の志賀直温さんからのあいさつがあった。

 この日のラインアップは、シングルマッチ2試合、6人タッグマッチ3試合、10人タッグマッチ、メインイベントのタッグマッチの全7試合。出場選手は全36選手(団体所属選手、フリー選手を併せ日本人28選手、外国人8選手)。オープニングの15分1本勝負、田中翔対小松洋平のシングルマッチだけが“黒タイツ”“黒シューズ”のヤングライオン(若手選手)の試合で、それ以外の6試合はすべてオールスターキャストのオンパレードだった。

 前座の第3試合にいきなり獣神サンダー・ライガーとタイガーマスクが登場してきた。現在進行形のジュニアヘビー級部門の主役はライガーでもタイガーマスクでもなくて、反対側のコーナーに立っていたIWGPジュニアヘビー級王者KUSHIDAだ。いまどきのジュニアの選手たちの動きは、オールドファンの筆者の目にはなんだかゲームの画面をみているような感じで、そのせいか、タイガーマスクのトップロープからのダイビング・ヘッドバットが――ほんとうはこれも“四次元殺法”なのに――妙に古風なものに映った。

 第5試合の棚橋弘至&真壁刀義&本間朋晃対後藤洋央紀&内藤哲也&キャプテン・ニュージャパンの6人タッグマッチ、第6試合の中邑真輔&オカダ・カズチカ&石井智宏&YOSHI-HASHI&外道対高橋裕次郎&バッドラック・ファレ&カール・アンダーソン&タマ・トンガ&ドク・ギャローズの10人タッグマッチは、どちらもスーパースター対スーパースターのからみの“さわり”あるいはダイジェスト版のような試合内容だった。

 メインイベントは永田裕志&中西学対小島聡&天山広吉のタッグマッチ。90年代にはひんぱんにおこなわれていたカードだ。いつもはまんなかあたりの番付で――実力的にはまったく衰えてはいないけれど――のんびりと試合をしている永田が、地元凱旋興行ということでトリをつとめた。

 永田は46歳。中西は47歳。小島は44歳。天山は46歳。いずれもキャリア20数年のベテランだが、コンディションはよく、動きもシャープまだまだシャープだ。18分を超える試合は、永田が十八番バックドロップ・ホールドで小島をフォールしてジ・エンド。観客席からの「永田、ありがとう!」という声に、永田は「オレたちの世代が強いところをみせてやるぜ」と応え、カーテンコールでは予定にはなかった“永ダンス”まで披露した。

 午後5時ちょうどに試合がはじまって、全7試合が終了したのは午後7時半。休けい時間を含めて全部で2時間半くらいのパッケージになっていたところがまたメジャー団体のハウスショー(地方興行)らしかった。シリーズ興行のなかのひとコマのハウスショーだから、タイトルマッチもないし、因縁ドラマの完全決着戦もない。心に残る名勝負のようなものは生まれにくいシチュエーションではあるけれど、オールスターキャストをいちどに目撃できるおトクなコストパフォーマンス的な感覚はあった。観客数は超満員の2300人(主催者発表)。東金アリーナは、遠いような、近いような、地方都市の蜃気楼のような――もちろん、そこにプロレスがやって来たおかげで――非日常的空間だった。

文責/斎藤文彦 イラスト/おはつ

※斎藤文彦さんへの質問メールは、こちら(https://nikkan-spa.jp/inquiry)に! 件名に「フミ斎藤のプロレス講座」と書いたうえで、お送りください。
※このコラムは毎週更新します。次回は、9月16~17日頃に掲載予定!




おすすめ記事