株で1億円稼いで人間関係を悪くした人に、佐藤優が送った言葉とは?
2月16日に発表された2014年10-12月期GDP速報値は消費税後初めて、プラス転換を達成し、年率換算2.2%に。安倍政権は「ようやくアベノミクス効果が出た」と言わんばかりに、誇らしげに「初のプラス」を強調したものだが、実際には市場予想の3.8%増(年率換算)を下回る結果……。実質賃金は以前としてマイナス成長なのだから、アベノミクスの効果を実感できていない、という人のほうが多いだろう。それだけに、“恩恵を受けた人”が思わぬ妬みを買うことも……。「株で1億円儲けたら、人間関係が壊れた」。そんな悩みを打ち明けた人に、最近『人生の極意』(扶桑社刊)を上梓した知の巨人・佐藤優氏が、トマ・ピケティの『21世紀の資本』を引用して送った、アドバイスを紹介したい。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
☆相談者☆ ジークフリート(ペンネーム) 公務員 男性 40歳
私は、独身の公務員です。採用されて以来、大きな失敗もないですが、大きな成果もなく、ごく平均的な職員だと思います。友人は全て結婚していますが、結婚以外のことについては、似た者同士だと思います。ところで、最近のアベノミクスで1億円近い投資利益が得られましたが、何かの拍子に周囲にそのことを話したところ、職場では、私が仕事に集中せず投資に力を入れているとか、友人の間では、私がお金に執着する守銭奴であるなど、中傷や妬みとも思える発言をするようになり、更には、親や兄弟もお金を援助してほしいなどの発言をするようになり、周囲との人間関係が以前とはかなり違ったものになってしまいました。以前の人間関係に戻るにはどうしたらよいのでしょうか。
◆佐藤優の回答
人間は本質的にやきもち焼きなので、「株売買で1億円を儲けた」などという話は秘密にしておかなくてはなりません。既に話してしまったのですから、それを前提に今後の行動について考えましょう。今回の売買益について、税金を払っていますか? 証券会社が源泉徴収していない場合、確定申告の必要があります。手続きをきちんとしておきましょう。あなたの儲けを妬む人が、税務署に密告している可能性があるからです。
ところで、あなたが1億円を儲けたことで、資本家の仲間に入ったと勘違いしないことが重要です。いま流行になっているトマ・ピケティが興味深い指摘をしています。
<実際に所得格差を比較すると 最初に気づく規則性は資本の格差が労働所得の格差よりも常に大きいということだ。資本所有権(そして資本所得)の分配は、常に労働所得の分配よりもより集中している。
すぐさま二つの点をはっきりさせておこう。まずこの規則性はデータが入手可能なあらゆる国のあらゆる時代に例外なく見られ、しかもその現れ方は常に相当強烈だということだ。その差がいかに大きいかをざっとつかんでもらうと、労働所得分布の上位10%が、通常は全労働所得の25~30%を稼いでいるのに対し、資本所得分布の上位10%は、常にすべての富の50%以上(社会によっては90%)を所有している。おそらくさらに驚くべきこととして、賃金分布の下位50%は、全労働所得のかなりの部分をもらっている(通常4分の1から3分の1で、上位10%が受け取っているのとほぼ同額)のに対し、富の分布の下位50%が所有しているものはまったくのゼロか微々たるものだ(常にすべての富の10%以下、通常は5%以下で、最も大きな富を所有する上位10%の10分の1)。労働所得の格差は通常は穏やかで小さく、ほとんど妥当とさえ言える(そもそも格差自体に妥当性があるとすればだが――この点をことさら誇張すべきではない)。これに比べて、資本に関する格差は常に極端だ)。>(トマ・ピケティ[山形浩生、守岡桜、森本正史訳]『21世紀の資本』みすず書房/254~255頁)
あなたは、公務員として基本的に労働所得で生活しています。この事実をきちんと認識していれば、今回の危機から脱することができます。今回儲けた1億円で、一戸建ての家を買うことをお勧めします。東京ならば、20坪に満たないいわゆる「ペンシルハウス」しか建ちません。地方ならば、一戸建てにプラスして、駅のそばで借り手がいつもつくマンションをあわせて買うといいでしょう。「株売買で家を買って、もう残っている金がない」ということが可視化されれば、親から家を相続している人は珍しくないので、職場の同僚に妬まれることもなくなります。また、親や兄弟も、あなたに余分なお金がないということがわかれば、「援助してくれ」と言うこともなくなります。その結果、あなたの生活は平穏になります。
◆募集
佐藤優さんへの相談を募集中。匿名希望の方はペンネームを記入してください。採用者には記念品をお送り致します。
⇒応募はコチラから https://nikkan-spa.jp/icol_form
【佐藤優】
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『読書の技法』『日本国家の神髄』『人生の極意』など著書多数 (※写真はイメージです)’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数
◆募集◆
佐藤優さんへの相談を募集中。匿名希望の方はペンネームを記入してください。採用者には記念品をお送り致します。⇒応募はコチラから https://nikkan-spa.jp/icol_form
佐藤優さんへの相談を募集中。匿名希望の方はペンネームを記入してください。採用者には記念品をお送り致します。⇒応募はコチラから https://nikkan-spa.jp/icol_form
『生き抜くための読書術』 ウクライナ危機、元首相暗殺事件、コロナ社会、貧困etc. 分断社会を打破する書物とは? |
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ