3.11震災から4年。無形の「被災文化財」が存亡の危機に
3.11地震によって起きた津波は、沿岸部の文化財にも大きな被害をもたらした。「震災復興」とは、道路や建物だけではない。その地域の文化の復興も重要なのだ。
博物館や資料館の中にはない文化財も大津波の被害を受けた。祭りや踊りなど無形の文化財だ。宮城県内の文化財修復活動を行っている、東北歴史博物館の小谷竜介さんはこう語る。
「宮城県では女川町から亘理町までの沿岸部が大きな被害に遭い、用具が流出したり担い手を亡くしたりして、多くの民俗芸能が存亡の危機にあります。もともと後継者不足に悩んでいましたが、それに拍車をかけた形です」
現在でも仮設住宅に暮らし、移転の場所がまだ決まっていない人も多い。しかも高台移転の対象になるのは住宅や公共施設だけで、寺や神社はもとの土地に取り残されたままだ。
「それでも住民の身体には、まだしっかりと地域社会で育まれた文化が残っています。例えば女川町竹浦地区はほぼ全戸が被災し、住民は秋田県のホテルに二次避難していました。このとき、笛を瓦礫の中から見つけて持ってきた人がいて、余興として獅子振りの囃子を奏でました。それを聞いた人たちは座布団やスリッパで獅子頭を作ったのです。現在同地区は復興に向かっていますが、この獅子振りの練習を通して地域の繋がりを広げていっています。
民俗芸能の復活は、地域コミュニティ復活の重要な柱でもあります。街や住宅の復興と同時に、新たにできあがった地域社会でどのようにこれら無形の文化財を引き継いでいくかも考えていかなければなりません」(同)
<取材・文/北村土龍>
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