絶滅危惧種の淡水魚「アユモドキ」の生息地にサッカー場を建設
景観・歴史・文化・環境・生態系などの破壊に目をつぶり、ひっそりと進行している開発計画は数多い。それは本当に必要な事業なのか? 地元住民はどれだけ情報を与えられているのか? 全国各地で進められている、“あまり知られていない”開発計画の現状をリポートした!!
◆「アユモドキ推し」から一転、生息地を壊しサッカー場建設
~桂川水系(京都府)天然記念物が絶滅危機~
絶滅が危惧される淡水魚アユモドキを守り、共存してきた京都府亀岡市。だがその歴史も、誘致が決まり京都府議会では整備予算案も承認されたサッカースタジアム建設によって大きな岐路を迎えている。
アユモドキとは、体長15cmほどのドジョウの一種で、泳ぐ姿が鮎に似ているのがその名の由来だ。世界でも日本にしか生息しない固有種であり、国の天然記念物に指定されている。かつては琵琶湖・淀川水系に多く生息したが、オオクチバスなどの外来種による捕食や、治水・河川整備などの環境変化によって激減。JR亀岡駅北側の桂川水系は、国内でも3か所しかないアユモドキの生息地の一つだ。「世界野生生物保護基金(WWF)ジャパン」の草刈秀紀事務局長は「京都府が建設する『京都スタジアム』(仮称)の候補地に亀岡市が選ばれたのですが、その建設予定地がちょうどアユモドキの生息地だったのです」と指摘する。
「そのためWWFジャパンだけでなく、日本魚類学会や日本生態学会、日本自然保護協会などいくつもの団体が事業の見直しを求める意見書を提出しています」
地域住民からもスタジアム建設に反対の動きが出てきた。今年1月、107人の住民が建設差し止めの集団訴訟を提訴したのだ。原告弁護団の高木野衣弁護士は「これまで条例などでアユモドキを守ってきたのに、スタジアム建設を優先するのはおかしいと原告の方々は訴えています。アユモドキを守ることは、地域の住民の安全や命を守ることにも繋がります。アユモドキの生息域は遊水地でもあり、スタジアム建設で地域の水害が悪化する恐れもあるのです」。
地元亀岡市はこれまでアユモドキを環境のシンボルとし、その保護活動を行ってきた。スタジアム建設が環境と共生する「原風景」を壊さないことを願うばかりだ。
― こっそり進む[ニッポンの風景]破壊計画 ―
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