穴場なのにメインストリーム的に楽しめるトランポリンの魅力

~フモフモ編集長の今から始める2020年東京五輪“観戦穴場競技”探訪 第11回~

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 トランポリンのスルー感は男子の競技開始の折に、さらにクッキリと際立ってきます。進行としては、10時20分から11時05分までが女子トランポリンの決勝で、11時10分から13時10分までが体操の種目別決勝前半、13時10分から13時55分までが男子トランポリンの決勝で、14時00分からが体操の種目別決勝後半となります。女子トランポリン⇒体操⇒男子トランポリン⇒体操と順繰りにやったわけです。

 そうすると何が起きるか。

 何と、男子トランポリンの決勝は「体操を観にきた人のランチタイム」になってしまったのです。体操の前半が終わり、これから男子トランポリンが始まりますよというタイミングで、観客は一斉に席を立ち、食事に行ってしまう。正確な数をカウントするのは難しいですが、「大半」はメシに行ってしまったと言って差し支えないと思います。ヒドイ、いくら間借りしている立場とは言え、この扱いはヒドイ。2000円以上払っているはずの客が、「これは観なくてもいいや」とメシに行くなんて。その様子を選手に直で見せつけるなんて。

 さらに、それに輪をかけたスルー感はテレビを通じてお茶の間に届けられていました。実はこの大会、テレビで中継されていたのです。6月21日の14時から『レスリング&体操 合体スペシャル 世界選手権代表決定戦』というタイトルで。この日は、すぐ隣の代々木第二体育館で、世界選手権の代表選考会を兼ねたレスリングの「全日本選抜選手権」が行なわれており、それとあわせてテレビ中継をされていたのです。

 その番組、ご覧になりましたでしょうか。僕は観ました。確かにそこには体操が映っていました。レスリングが映っていました。しかし、同じ会場で、同じように世界選手権の代表選手を選んでいたトランポリンは映っていなかった。ウソだろうと思って、3回見返しましたとき、ようやく気づきました。試合が始まる前に収録した、大会の展望を語る解説者コメントのうしろで、トランポリンの女子選手がポンポン跳ねている場面が映っていることに。これは、映ってるんじゃなくて、見切れてるって言うべきですかね。

 日テレのビブスを着たスタッフがトランポリンの映像を撮っていたことは間違いありません。カメラを向けていましたから。しかし、その映像は寝かせておくヤツだった。後日、CS放送で真夜中にお届けするためのキープだった。そして、トランポリンのことなどまるでなかったことのように、体操とレスリングだけを特番で中継した。同じ時間に収録した映像なのに、「コレは寝かせておこう」とわざわざカットされた。意図してスルーされるこれが、穴場でなくて何なのか。

 イケる。これはチケットが取れる。僕には手応えしかありません。もし自宅にトランポリンがあれば、上でポンポン跳びながらガッツポーズしたいくらいの心境です。金払った客が競技を観ないで食事に出掛け、映像をおさえたテレビマンが撮った映像を寝かせておくような競技なら、観られないはずがない。2020年東京五輪で体操を観るのは極めて困難でしょうが、トランポリンはイケると確信しました。

 会場で購入した体操の公式パンフレットにもチョイ足しでトランポリンの説明が。しかし、得点の計算方法を記載したページで「9.0×3=24.0」という謎の誤植をやらかしたことで、トランポリン初心者を「得点の出し方がよくわからんな…」と悩ませることに。

【全日本体操種目別選手権公式パンフレットP.31より】


 さらに、大会の進行を記載したページでは、次にやるのは男子なんだか女子なんだかよくわからない謎の記載も。体操担当の人がトランポリンのページをついでに作ったら、こんな感じで雑になるのかもしれない。

【全日本体操種目別選手権公式パンフレットP.30より】



 なお、トランポリンの模様は、1週間寝かせてから夜中にCSで放送されました。これでもトランポリン的には異例の大きな扱いだそうです。

 このように無情なスルーにさらされたトランポリンですが、実際に観ればなかなか面白いものです。とにかく、圧倒的な跳躍の高さと、矢継ぎ早に繰り出される宙返りはスゴい。本家・体操をも凌駕するクルクルです。たとえば、消防署でやる新春出初式なんてハシゴの上でクルクルしているだけで人が集まるじゃないですか。それ以上の高さのクルクルをハシゴなしでやっているトランポリンが、こんなにスルーされるというのも不思議な話です。トランポリンには面白い要素が確実にあります。人間がクルクルするさまは、それだけで素晴らしいエンターテインメントです。

 また、競技性としてワンミスが大きく勝敗を左右することから、緊迫感のある観戦が楽しめます。トランポリンでは、まず高くまっすぐ跳ぶことが肝心です。跳んでいる時間が長ければ跳躍時間点が増えますし、何よりも演技するときのゆとりが生まれます。逆にトランポリンの端に寄ったりして跳びが低くなったり斜めになったりすれば、当然クルクルするのは難しくなります。

 まっすぐ跳んで、まっすぐ降りて、またまっすぐ跳ぶ。トランポリンのド真ん中を人間ロケットで狙うかのように、つま先を尖らせて選手たちは跳躍しています。ひとたび跳躍が乱れれば、たちまちジャンプの軌道は大きくズレ、トランポリンの枠に身体を打ちつけられてしまうことさえも。体操でも着地が決まった瞬間にカタルシスを覚えますが、トランポリンはそれを10回連続でやってくれるのです。この緊迫感、悪くない。

 そして、何と言っても、トランポリンは「大きなくくりで言えば体操である」という点は大きい。「五輪観たの?」「何観たの?」という質問に対して「た、体操」と答えても問題はないのです。体操だもん。会場もたぶん一緒ですし、吸い込む空気も一緒のはずです。穴場でありながら、メインストリームの空気も感じられるなんて、ちょっとお得じゃないですか。メインストリームへの未練を消せないタイプの方には、ぜひオススメしたい穴場……それがトランポリンなのです。




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