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大きなくくりで言えば体操!ついついスルーしがちなチョイ足し競技「トランポリン」はイイ感じの穴場だった件。――フモフモ編集長の東京五輪“観戦穴場競技”探訪

~今から始める2020年東京五輪“観戦穴場競技”探訪 第10回~

フモフモ編集長と申します。僕は普段、スポーツ観戦記をつづった「スポーツ見るもの語る者~フモフモコラム」というブログを運営しているスポーツ好きブロガーです。2012年のロンドン五輪の際には『自由すぎるオリンピック観戦術』なる著書を刊行するなど、知っている人は知っている(※知らない人は知らない)存在です。今回は日刊SPA!にお邪魔しまして、新たなスポーツ観戦の旅に出ることにしました。

 これまで射撃馬術ボートと穴場競技をめぐってきた本連載ですが、今回は過去3回と大きな違いがあります。それは「有料」で観戦してきたこと。実は過去の3回はいずれも無料で観戦が可能なものばかりで、大会当日に現場にフラッといってタダで観てきたのです。その意味で、今回は若干「穴場」感が薄いのではないかという危惧を感じる向きもあるでしょう。

 ですが、ご安心ください。光の中でこそ影がクッキリと際立つように、有料だからこそクッキリと際立つ「穴場」もあるのです。今回の穴場は体操競技の一角に何となくあるけれども、いわゆる「体操」とは隔離され、実際のところどういうものだかよくわからないアノ競技、「トランポリン」です。

 五輪には多数の競技がありますが、ときおりチョイ足しのように紛れ込んでくるものがあります。水泳という大きなくくりの中にチョイ足しで入ってきている「飛び込み」であるとか、バレーボールという大きなくくりの中にチョイ足しで入ってきている「ビーチバレー」であるとか、ヨットという大きなくくりの中にチョイ足しで入ってきている「RS:X級(いわゆるウィンドサーフィン)」であるとかです。体操という大きなくくりの中の「トランポリン」もそうしたモノのひとつ。

 メインストリームのド真ん中ではないチョイ足し種目には、穴場があるのではないか。例えばロンドン五輪の体操とトランポリンの関係で言えば、会場こそ同じノース・グリニッジ・アリーナでしたが、体操をやっている日はトランポリンをやらず、体操と体操の合間に差し込まれるようにトランポリン競技は実施されていました。当然、チケットも別々に売られています。射撃や馬術のように独立していないぶん、穴場狙いのライバルからも、うっかり忘れられてしまうのではないか。そんな期待が高まります。

 ということで訪れたのは、前回東京五輪のレガシー・国立代々木競技場第一体育館。この会場で第69回全日本体操種目別選手権大会(※ひねり王子こと白井健三選手などが出場する大会)が行なわれているとき、チョイ足しで併催された「第31回世界トランポリン競技選手権大会 日本代表最終選考会」を観てまいりました。

 入場料は前売りの自由席券が2000円。これまでがタダだったことから考えると、何だかすごいビッグイベントにきてしまった感じです。はたして、このうちの何円ぶんが体操で何円ぶんがトランポリンなのでしょうか。「体操2000円、トランポリン0円」だとすれば、トランポリンだけ見たい人にとってはありがた迷惑な感じになっちゃいますね。実際、ありがた迷惑です。ここはひとつ「体操が2000円だけれど、トランポリンだけ別個でやろうとすると、それはそれで会場費等のために2000円徴収する必要が出てくるから、ついでに体操も見られるほうがオススメですよ」という解釈でいきたいところ。うむ、きっとそうに違いない。

 やってきましたスポーツの聖地・代々木第一体育館。

 全日本体操種目別選手権開催! という大きなお知らせ。

 そこにチョイ足しされたトランポリン日本代表最終選考会開催のお知らせ。見事なまでの「チョイ」足し感。

 体操のスペースの一角にトランポリンが置かれる場内図。母屋だけ賃貸に出して下宿人が住んでるみたいな間取りです。

 この日の選考会では五輪種目でもある「個人トランポリン」によって代表を選考していました。「個人トランポリン」の大まかな仕組みとしては、選手がトランポリンの上で10回の技を行ない、①技自体の難しさによる難度点、②出来栄えを評価する演技点、③空中にいる時間の長さによって得られる跳躍時間点の合計によって争うというものです。

 ①の難度点は、宙返りの回数やひねりの回数が多ければ多いほど高くなり、その際の姿勢(基本的には抱え込み<屈伸<伸身と身体が伸びるほど高くなる)によっても変わります。ザックリ言えば、より多くクルクルしたほうが高得点というものです。

 ②の演技点は、足や腕がキレイに伸びているか、両足が割れずに揃っているか、トランポリンの端に寄っちゃったりしていないかなど、演技の美しさによる評価。とりわけトランポリンで特徴的なのは「身体をピンと伸ばす」ことへのこだわりです。演技においても、なるべく早く回転を終わらせて身体をピンと伸ばすことが求められ、抱え込みや屈伸の姿勢から素早く伸身に戻すことが重要です。ガラケーをパカッと開くように空中で身体がパカッと開くところは、その瞬間に一気にゆるやかになる回転速度などとあわせて、体操とは一味違うトランポリンならではの見どころです。

 そして③の跳躍時間点は、高さ点とも呼ばれるもので、トランポリンから身体が離れている時間の長さによって得られるもの。同じ程度の内容ならより高く跳んだ選手が勝ちとなる仕組みです。

 男子のトップ選手の場合、①が大体16点から18点、②が大体24点から27点、③が大体17点から18点といったところ。得点の配分もそうですし、そもそもトップ選手同士であれば①や③で大差がつくはずもなく、何と言っても②の演技評価点すなわち「美しさ」がトランポリンにおいては最優先。美しくクルクルした選手が勝ちなのです。

 ロンドン五輪金メダリストの演技。こんな感じでクルクルする。どれだけクルクルしても、最後は身体をピンと伸ばして降りてくる。

 なお、トランポリンを使って跳馬のようにクルクルする種目など、五輪にはない種目もある。

 そして始まったトランポリンの代表選考会。しかし、女子の競技開始となる午前10時20分を過ぎても客席は閑散としたもの。スタンドの埋まり具合は2割程度で、その大半は企業や大学からやってきた体操の応援団。一応、これがリオ五輪に直結する世界選手権の日本代表最終選考会なのですが……。

 このあたりは、チョイ足しならではの悲哀でしょうか。2000円払ってココにくる観客は、やはり体操がお目当ての人が多く、体操が始まる時間にあわせて入場するのでしょう。で、珍しく早めに入場している人は「競技開始前に準備をする体操の応援団」だったりすると。中途半端に人数がいるぶん、トランポリンがスルーされてる感というのも際立ってきます。うむ、コレは穴場っぽいです。

※次回「穴場なのにメインストリーム的に楽しめるトランポリンの魅力」




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