グルメマンガの問題作『ゴハンスキー』作者・清野とおる「料理が上手く描けないので、アシスタントさんにお願いしています」
ダイソーの「激安ワイン」や、100円ローソンの「干しほたるいか」など、食べ物やお店を作品に取り上げるやネットで評判を呼び、商品が売り切れるなど、注目のグルメマンガ『ゴハンスキー』(清野とおる著)。今回はその作品の制作秘話について、清野氏本人にインタビューを行った!
清野氏といえば、『ウヒョッ!東京都北区赤羽』をはじめとして、磁場の狂った異界を彷徨うような街モノ実録マンガのイメージが強いが、『ゴハンスキー』はグルメマンガ。毎回読みきり形式で、ストレートな食べ物ネタの回もある一方で、清野ワールド全開の狂気をはらんだ話も多いのが特徴だ。
居酒屋ライター・パリッコ氏と一緒に池袋や練馬の飲食店に訪れた回では、アナーキーな店や店員、お客さんが次々と登場。パリッコ氏は「清野さんがやって来るとその土地が赤羽化する!」と驚嘆の声を上げる。
「最初は“おいしい食べ物”をテーマに描こうと思っていたんですけどね。途中で『逆方向のアプローチもアリなんじゃないか』と思いついて、『トラウマ飯』のような話も描くようになりました」(清野氏)
その「トラウマ飯」(※強烈な体験をきっかけに食べられなくなってしまった料理や食材のこと)の回では、清野氏自身がパイナップルを嫌いになった、幼稚園時代の壮絶なトラウマ体験を披露。この話以外にも、「面白いけどこれはグルメマンガなのか……!?」と読んでいて不安になる回も『ゴハンスキー』では多い。そこで清野氏がグルメマンガに対するイメージを確かめるため、「好きなグルメマンガは何か?」と聞いてみた。
「僕が最強のグルメマンガだと思うのは『グラップラー刃牙』ですね。筋肉ムキムキの男が肉やワインを貪る姿を見ると、メチャクチャ食欲をそそられます。あとモチロン『孤独のグルメ』とかも好きですけど、久住昌之さんの作品ではラーメン屋「江ぐち」の本(『孤独の中華そば「江ぐち」』)も大好きです。特に店員さんともコミュニケーションを取らずに、勝手にアダ名をつけたり、プライベートを勝手に妄想したりして、それを許可なしで本にしちゃうのは斬新が過ぎますよ!」(清野氏)
このような作品が挙がっている時点で、『ゴハンスキー』が“普通のグルメマンガ”の枠からはみ出してしまうのも無理はない。「でも、料理や食べ物を描くときにはこだわっていることもあるのでは……?」と聞いたところ、驚きの答えが返ってきた。
「僕は料理が上手く描けないので、アシスタントさんに『美味しそうに! とにかく美味しそうに!』と頭を下げてお願いして描いてもらっています。『缶とか瓶が出てくるこの回はあのアシスタントさんに』『肉類と麺類はあのアシスタントさんに』『今回は液体モノだからこのアシスタントさんだ』と、適材適所でお願いをするのが僕の役割なんですよ」(清野氏)
“作者本人が料理を描かないグルメマンガ”というのも新しいが、それでも清野氏の世界観が全編に溢れまくっているのも面白い。
「このマンガを読んで、料理の美味しさを描くこと以外にも、食事や飲食店の面白さを伝える方法は色々あるんだと気づかされました!」と感想を伝えたところ、「……まさに、そういう狙いのマンガなんですよ。やっとお気づきになられましたか。ウハハハ!」と、ほくそ笑みつつ答える清野氏。聞けば聞くほど異界に迷い込んだような心持ちになってしまったインタビューであった。 <取材・文/古澤誠一郎>
●『ゴハンスキー』特設サイト https://nikkan-spa.jp/info/gohansukieeee

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