「NHK紅白歌合戦」2011年の出場者は「奇跡!」と識者が激賞(後編)
「第62回NHK紅白歌合戦」出場歌手が11月30日に発表された。
そこで、日本一「NHK紅白歌合戦」に精通している放送作家として知られる寺坂直毅氏に今年の紅白の動向を大予測してもらった。「今年の紅白は、奇跡のようなキャスティング」と寺坂氏は高揚する。
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――失敗できないとなると気になるのが視聴率です。数字についてはどうですか。
寺坂「今年は、視聴者にとって『復興への願い』という“歌を聴く理由”があるので、去年(最高視聴率49.7%)よりUPすると思います。和田アキ子さんが紅白で頻繁に歌う『あの鐘を鳴らすのはあなた』でも、今年だったら意味合いが違ってくる。歌詞がいつも以上に胸に迫ってくるんです。北島三郎さんが『帰ろかな』を歌ったら、故郷に帰りたくても帰れない切ない思いが募る。千昌夫さんが『北国の春』を歌ったら、故郷への懐かしい思いや復興への希望が沸いてくる。
今年ほど、歌手の力量が問われ、歌の説得力を問われる年はありません。そういった点でも、今年は歌手の緊張が二倍、いや、それ以上だと思います。今年の紅白は、もう二度と経験できない紅白かもしれませんよ」
――歌手たちのプレッシャーも相当なものになりそうですね。
「単なる歌番組でなく、ドキュメンタリーという見方もあります。歌手たちが絶対に失敗できないという空気感のなかで追い込まれ、徹底的に力を込めて歌う。そういう歌手たちの必死な表情を、CMなしで一気に見れるのも紅白の大きな魅力です。しかもコタツで酒飲みながらニヤニヤしながら見られるっていうエグさ(笑)。たとえば『Mステ』で失敗したら“あ~あ”程度で終わるけど、紅白で失敗したらずっと言われますからね。他の歌番組では決して見られない、歌手たちの表情もポイントのひとつでしょう」
――なんらかの事情で歌手が歌の途中で泣いてしまって、観客から拍手やエールを送られるというシーンもよくありますよね。
寺坂「NHKのイジワルなところは、歌手が泣いたりしたらたちまちドアップになるんです。“もっと泣け、もっと泣け”といわんばかりに(笑)」
――そんな緊張感あふれる今年の紅白ですが、特にどのアーティストに期待していますか?
寺坂「僕はユーミンです。2005年、『松任谷由実 with Friends Of Love The Earth』というユニットで出場していますが、ソロとしては初出場。大みそかにあのヒット曲『春よ、来い』を聴いたら、感動必至です。未曾有の災害が起こって辛い思いをした2011年に思いを馳せ、明日からは2012年が始まる、大みそかという特別な日。『気持ち新たに頑張ろう』と思わせてくれそうですよね。僕は基本的には中継は反対なので、NHKホールでぜひ歌って欲しいですね」
文字数がいくらあっても足りないほど熱く語る寺坂氏だが、実は年末はいつも仕事。7年間も紅白を生で見ておらず、元旦の夜に録画しておいた紅白をお酒を飲みながら見て、中継で流れるナマハゲの様子までも堪能するという。かくいう記者は、民放各局とザッピング派。だが、寺坂氏によって演歌の魅力を知り、なにより紅白の楽しみ方を教えてもらった今となっては、今年は浮気せずに紅白をじっくり見てみようと思う。
●寺坂 直毅さん プロフィール
1980年、宮崎県生まれ。放送作家。「やりすぎコージー」(テレビ東京系)など担当。実家は毛糸店を営み、「愛を編む」を捩った「アイ・アム・テラサカ」という屋号。好きな女性は黒柳徹子。デパート愛が昂じて書きあげた処女作『胸騒ぎのデパート』(東京書籍)が好評発売中。
公式ブログ「デパートと紅白バカの生活」http://ameblo.jp/debaka/
取材・文/ならこ
『胸騒ぎのデパート』 デパートメントストアは「エンターテインメント」である |
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