プロレスラーとロックスターの混血――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第318回(1999年編)
プロレスを感性と視覚のコミュニケーションととらえるロックンローラー。ニックネームは“Y2J”“アヤトーラ・オブ・ロックンローラー”。お気に入りのキャッチフレーズは“ロウ・イズ・ジェリコ”。クリス・ジェリコは、プロレスラーとロックスターの混血である。
ロックは音のプロレスで、プロレスは肉体のロックというのがジェリコの持論。ルックスそのものはロックンローラーで、ハートはプロレスラー。ジェリコのなかではふたつのジャンルに境界線は存在しない。
1995年9月のTVシーズンからスタートしたWWE“マンデーナイト・ロウ”対WCW“マンデー・ナイトロ”の月曜TVウォーズは、1999年の夏でまる4年を迎えていた。
WWEは1999年8月、親会社の社名をそれまでのタイタン・スポーツ社からWWFE(ワールド・レスリング・フェデレーション・エンターテインメント社)に変更し、株式を公開してナスダック市場に上場。
ビンス、リンダ夫人、長男シェーン、長女ステファニーのマクマホン・ファミリーに関するニュース――現実とファンタジーとの分類がむずかしいソープオペラ――が連日、マスメディアをにぎわせていた。
WWE全体の2000年度の年商はネットバリュー(税込み)で4億ドルが見込まれ、月曜夜の“ロウ・イズ・ウォー”(TNN=ケーブル)と木曜夜の“スマックダウン”(UPN=地上波)の2番組はいずれも毎週、全米500万世帯が視聴。これもまたファンタジーのような現実の数字だった。
いっぽう、WCWは“ナイトロ”の番組視聴率の急激な落ち込み、PPV契約世帯数の大幅な減少、ハウスショー興行の地盤沈下を理由に同年9月10日付でエリック・ビショフ副社長を更迭し、ビル・ブッシュ営業担当部長が副社長に昇格。
1
2
この連載の前回記事
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ