全国初「政活費問題」取り上げた竹原信一元阿久根市長。富山市議選をどうみるのか?
昨年から今年にかけ、政務活動費の不正取得問題などで計14人の市議が辞職するという異常事態に陥っていた富山市議選が、市長選とともに4月16日に投開票日を迎える。
「飲むのが好きで、誘われたら断れない性格だった――」
最初に不正を認め辞職に追い込まれた自民党会派の元会長、中川勇氏は、当時こんな珍妙な申し開きを口にしていたが、富山市議会では、市議による私的な飲食費の不正請求や、白紙の領収書に自ら金額を書き込む手口の水増し請求が横行。時に、「政活費(生活費)」などと揶揄されることもある政務活動費は、透明性の確保が不確かで、使い切らなければ損という「前払い制」が問題視されており、富山市議会に限らず、全国各地でたびたび不正取得問題が報じられている。
今回の富山市議選で手を挙げたのは、定数38の議席に対し58人。候補者のなかには、議員を辞職したうえで改めて有権者に信を問おうという前職も含まれており、半ば大混戦の様相を呈している。そんな選挙戦に沸く街に、遠く鹿児島からある一人の候補者の応援に駆け付けた人物がいる。今から7年前、全国で初めて政務活動費(当時の名称は「政務調査費」。2012年の地方自治法改正により改称)という「政治とカネ」の問題を明るみにした、前阿久根市長で現在同市議を務める竹原信一氏、その人だ。
竹原氏といえば、市役所職員の人件費削減を訴え2008年に阿久根市長選で初当選した直後から、市議会や市役所職員と激しく対立したことでも知られる「改革派首長」の一人だが、民間企業と市役所職員の「給与格差」を告発するために、自身のブログで市職員の給与明細を「全面公開」したことをはじめ、「辞めさせたい議員アンケート」の実施や、勤務時間中も組合の仕事に従事する市職労事務所に退去命令を発動するなど、その荒っぽい手法がたびたび批判の声に晒されたのを覚えている人も多いだろう。
2度のリコールを受け、最初の出直し市長選こそ勝利したものの、当時多くのメディアが「市政の混乱を招いた」と竹原氏を批判していたこともあり、2度目の出直し市長選で落選。現在は、市議の立場から地方議会の在り方に問題提起をし続けている。そんな紆余曲折を経験した彼は、今回の富山市議選をどう見ているのか。竹原氏に話を聞いた。
――今回行われる選挙の最大のテーマは政活費の問題と言われているが。
竹原:政務活動費の問題は富山市に限った話ではありません。地方議員のほとんどは、ろくに仕事もせず、高い報酬を受け取ったうえ政務活動費を私物化している。2007年、私が発見して全国に広く報じられた阿久根市議会のケースを引き合いに出しますが、ある市議が実際には買ってもいないプリンター(計8万4000円)を購入したと偽ってニセの領収書を作成していた。市民からの告発もあったことから、腰の重い警察が動いて書類送検されました(その後、不起訴)。当然、私も彼に対する辞職勧告決議案を提案したのですが、信じがたいことに市議会は否決。その後、政務活動費で温泉パックツアーに行っていた議員も出てくるなど、阿久根市議会全体が公私混同当たり前の状態になっていたのです。早めの使い切りを指導していた議長は、当時テレビ局の取材に対して「(不正を働いた議員たちに)悪気はなかった」と説明していましたが、そもそも良心がないから悪気もないわけです。公になったことを「運が悪かった」と思っているだけで反省などあり得ない。
――辞職勧告決議を否決したことで、当時、阿久根市議会に対するバッシングが酷くなったので、議会は政務調査費そのものを廃止しましたね。
竹原:また騒ぎになることを恐れたから廃止にしただけの話。ただ、今の議長は「そろそろほとぼりが冷めた」と感じたようで、昨年から政務活動費復活に向けた動きを始めました。私からそれを聞いた市民が、タウンミーティングで問いただしたことから復活への動きが少し低調になっています。彼らは「隙あらば必ずやる」のです。
今回の富山市の選挙でも、「議員の資質とまちづくりの中身」が決定的な選挙テーマにはならない。なぜかと言えば、そもそも市民に有権者としての資質が欠落しているのです。だから肝心なところに興味が向かわない。今のように、誰かがでっち上げた争点や付き合いなどで、儀式やお祭りのごとき選挙をするようでは何も変わりません。これでは有権者も政治家と同程度にあさましく幼稚だと言わなければなりません。
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