ヤクザの家族が直面する壁…潔癖主義の社会で「ここまで追い込まれるなんて」
千葉県某市の市営団地に暮らす智恵美さん(仮名・36歳)は、二人の子供を育てるシングルマザー。昼はコンビニで、子が寝静まってからは倉庫内作業のアルバイトをしてどうにか食いつないでいるが、約1年前までは、都内の高級賃貸マンションで夫と4人、何不自由無く生活していたのだという。その“転落”の原因とは何か。
「暴力団員の夫・A(45歳)とは二十代の半ばで知り合いました。夫は私が働いていた貴金属店の常連客で、数年の交際を経て結婚しました」
毎週のように店を訪れては、数十万円の時計やネックレスといった貴金属を購入していくA氏に興味を持った智恵美さんだったが、アプローチはA氏からだった。
「いきなり『ご飯どう?』って誘われて……。“遊び”だろうって軽い気持ちで応じたのですが、車屋や飲食店などを経営する“実業家”だったことも判り、交際はすぐに始まりました。“暴力団員”だって打ち明けられたのはそれから3か月後くらい。刺青があったり、泊まりが多いことを問いただすと、『実は……』という感じで話してくれて」
A氏が暴力団員だと判明してからも、二人の付き合い方は何ひとつ変わらず、優しいAさんにのめり込んでいったのは智恵美さんの方だった。『俺はヤクザだからお前に迷惑がかかる』『俺はヤクザだから一緒にならない方がいい』、そういったことを言われる度に、むしろA氏のことが愛おしくなっていったと回想する。そして智恵美さんはついに、A氏との結婚を決めた。
「両親は当然猛反対でしたが、ほとんど駆け落ち同然で無理矢理に結婚しました。式は挙げておらず、二人で婚姻届を出した以外には、ごく身近な友人を呼んでパーティーをしたくらい。あの時、私には“極道の妻”になるなんて認識は1ミリもなかったんです」
それもそのはず。A氏は日中は事業を営み、夜や休日にだけ組事務所で“当番”する程度で、事業が成功してからは暴力団員としての側面は年々薄れつつあった。
白か黒か…潔癖主義の社会でヤクザの家族は今…
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