“神様”ゴッチのビデオ『KAMISAMA』――フミ斎藤のプロレス読本#055【カール・ゴッチ編エピソード3】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
ビデオのタイトルは『KAMISAMAカール・ゴッチ・ストーリー』。
ずいぶんずうずうしいことをしてしまったのかもしれない。ぼくはカール・ゴッチ先生の家に押しかけていって、ビデオカメラをまわし、ゴッチ先生の生活を映像におさめ、そのビデオに『KAMIASAMA』なんてタイトルをつけた。
おしゃべり好きなゴッチ先生を喜ばせようと思って、水先案内人として、ゴッチ先生が心を許すひじょうに数少ない友人のひとりである藤原喜明にわざわざフロリダまでご足労願った。
ゴッチ先生と藤原組長の結びつきは、師弟関係というよりはむしろ親せき付き合いに近い。“神様”は久しぶりに藤原組長とゆっくりおはなしができてなんだかうれしそうにしていたし、組長は組長で耳にタコができるくらいこれまで何度も聞かされてきた訓辞のリピートをそれなりにエンジョイしているようだった。
ゴッチ先生のドイツ語なまりの英語とカタコトの日本語、藤原組長の中級レベルくらいの英語、それからドイツ語のかんたんな単語がごちゃ混ぜになってもちゃんと会話が成立するのは、ふたりがレスリングという共通の言語を身につけているからにちがいない。頑固一徹のゴッチ先生があんなにニコニコするのはめずらしい。
このビデオにはゴッチ先生の本音がぎっしりとつまっている(と思う)。“神様”が話してくれたことは、U系各団体とまな弟子たちへのメッセージであるだけでなく、すべてのプロレスファン、レスリング・ビジネスへの啓示になっている。
このビデオは、ドキュメンタリーでもイメージ映像でもない。ゴッチ先生と藤原組長が旧交を温めた何日間かのスケッチ集だから、これをごらんになったみなさんひとりひとりが自由にストーリーを組み立ててくれればいい。
ゴッチ先生は、ビデオのなかで「ピース・アンド・ハッピネス・フォア・オール・オブ・ユーPeace and happiness for all of you(みなさまに平和と幸あれ)」と語ってくれた。
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