サンドマンは自堕落、自暴自棄、そして自己陶酔――フミ斎藤のプロレス読本#113【ECW編エピソード05】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
“サンドマン”は、おとぎなばしの登場人物である。辞書をひくと“睡魔”“子どもたちの目に砂を入れて眠らせる妖精”なんて出ている。
ECファッキンWのサンドマンは、自堕落で自暴自棄で不摂生でどうしようもない酔っぱらいキャラクターである。もちろん、入場テーマ曲はメタリカの“エンター・サンドマンEnter Sandman”だ。
コスチュームはダボダボのスウェットパンツになんでもない白のTシャツ。スウェットの柄をよくみてみると、いかにもハードロック系のおどろおどろしいドクロ模様が描かれていたりする。
リングシューズの代わりにハイトップのスニーカーを履いていて、頭にはバンダナを巻いている。ようするに、ふだん着のままリングに上がってしまうのである。
必須アイテムはタバコと缶ビールとシンガポール・ケイン(竹刀)。スポーツマンシップなんて知ったこっちゃねえ、健康管理・自己管理なんてクソ食らえ、が基本姿勢だから、試合まえだろうがなんだろうがタバコをプカプカ、ビールをグビグビ。
ドレッシングルームでは、自分の出番が来るまでに缶ビールを15本くらい飲み干す。ちょうどイイ感じで酔っぱらっているくらいじゃないと体がいうことをきいてくれないらしい。
それでも、サンドマンはいちおうベビーフェースということになっている。ECWのリングでは、ルックスのいいレスラーや正義漢ぶったテクニシャン系がブーイングの対象となり、日常性から逸脱したパーソナリティー=人格が拍手喝采を浴びる。
サブゥーしかり、カクタス・ジャックしかりである。そんななかでも、サンドマンはとくにコアな層の観客の心のよりどころになっている。
ECファッキンWのターゲット観客層は25歳から45歳くらいまでの男性。サンドマンにいわせれば「ゆるい試合をやったら、だれの目にもそれはわかること」。
「彼らはアクションとバイオレンスを求めている。そして、購買力がある。マネーを費やしてオレたちのレスリングを観にきてくれる」
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