更新日:2018年04月26日 22:58
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自衛隊の射撃訓練はクレー射撃の選手より撃つ回数が少ない

「自衛隊ができない30のこと 19」

自衛隊

陸上自衛隊HPより引用

 自衛隊の射撃訓練で最初に驚いたことは、訓練後に薬莢を拾い、持ち出した実弾と数があっているか確認するということでした。持ち出した実弾と薬莢の数がきちんとそろわなければ、1日でも2日でも探し続けるのだそうです。自衛隊のスタンダードで使っている64式小銃・89式小銃では薬莢は薬莢受けに落ちていくようにセットしてあり、ほぼ100%そこに落ちるので、薬莢を探し回る事態に陥ることはごくまれですが、他の銃器では薬莢が飛び出すものもあります。とても面倒だなぁと思います。  この薬莢と実弾の数合わせ点検は自衛隊だけでなく警察もやっています。警察はライフルではなくリボルバーがメインなので、実弾を撃っても薬莢がどこかに落ちることはありません。警察は射撃レンジに薬莢を並べる箱があり、弾を入れ替えるときに薬莢を並べていき、最後にその容器をもって点検を受けるようになっています。  予算がなく特殊な薬莢に限ってリサイクル活用している場合を除いて、外国の軍や警察では薬莢拾いをしません。この管理制度は日本の銃刀法の影響なのです。実弾は銃刀法の規制を受けており薬莢もそれに含まれるので、適切な管理が義務付けられているのです。ここも自衛隊が軍ではなく行政組織の一部で通常法で縛られているという一例です。警察や自衛隊にその制度があるのは不思議です。  さて、自衛官には射撃の訓練があります。自衛隊内の少数の特殊部隊はほぼ無制限で射撃訓練ができますが、ほんのわずか数百人単位です。では、一般の「歩兵」に当たる普通科の人たちはどんな射撃訓練をしているのでしょうか? 所属する駐屯地や部隊によって訓練の内容には濃淡があるので一概には言えませんが、普通科では1回20~40発程度を1~2カ月に1回射撃訓練するそうです。また、射撃訓練する場所の問題で特定の距離で定位置からの射撃練習ばかりになりがちです。シューティングゲームのように不意に自由自在に現れる敵をバンバン撃つような実戦射撃訓練ができません。本当にそれで実戦での戦闘に対処できるのかは疑問です。  さらに海上自衛隊や航空自衛隊になるとさらに射撃訓練の頻度は下がり、与えられる弾の数は1年に30発前後となります。ライフルは調整さえしっかりすればかなりの精度をもちますが、その程度の練度では調整すらきちんとできるのかと不安になります。  一般のスポーツとしてクレー射撃をしている人たちがどれくらい練習しているのかを銃砲火薬店のオーナーに聞いてみました。クレー射撃とは飛んでいるお皿を撃つゲームです。25発で1ゲームとなりどれだけ当てたかを競います。よく練習している人だと1日に4ゲーム、100発ほどの実弾を撃ちます。  日本では一定の手続きを経た後に免許を与え、銃の所持を許可しています。最近、鳥獣駆除の猟友会が高齢化していることと、銃の許可を取るのが外国人ばかりなのが問題となっています。害獣駆除のために日本人の若者が免許を取ってくれることを地方では歓迎しています。日本人ハンターが増えてほしいものです。
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射撃訓練が少なすぎる…
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おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


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