「自衛隊は有事でも赤信号で停止する」…嘘のようなホントの話
「自衛隊ができない30のこと 16」
少し前に「有事に自衛隊は赤信号で止まるのか?」ということが話題になりました。2003年に武力攻撃事態対処関連3法が成立し、有事法制の基本法である武力攻撃事態対処法が施行されましたが、日本の戦車にはウィンカーがあります。このままだと赤信号で止まらなければならないことは変わっていません。赤信号で止まったらそこで敵から狙い撃ちじゃないの!? そんな話も当時あったように思います。
そこで今回、防衛省に直接「有事でも自衛隊は赤信号を守るのですか?」と聞いてみました。すると「武力攻撃事態になっても、基本的に信号、その他道路交通法は遵守する」との回答が返ってきました。有事法制でも話題になったこの問題ですが、まだ道交法で「有事には自衛隊は道交法が適応除外になる」というような法改正はありません。だからとても解釈がややっこしく、基本的には法律を遵守するとしか言えないのです。
有事法制で自衛隊が有事に適応除外になっている項目を記載しているのは自衛隊法115条ですが、道交法では道路の占有についての適応除外が書き加えられています。つまり、道路の占有等を行う場合は、管轄警察署長の許可を受けなければならないのですが、有事だと通知だけでOKになりました。有事の時の自衛隊への道路交通法の適用除外はそれだけであり、赤信号を守らなくてもいいという記述はないのです。もちろん、ウィンカー表示が要らないという記述もありません。法定速度も守らないとダメです。
これでは有事でも「この自衛隊車両は今からこっち方向に曲がりますよー」と敵に教えるウィンカー表示をするのか?と心配になります。「赤信号」「ウィンカー」「法定速度」と気になるところは法令を解釈して対処するしかありません。だから、人によって話が違ってくるのです。防衛省に問い合わせても「有事の赤信号走行について」をピンポイントで考えようとする動きはないようです。
有事法制では道交法がらみの改正は「道路の占有等を行うことについては通知で足りる」という改正されています。この部分を準用すると考えられています。ただし、これはあくまでも陣地を作るための法令改正なのです。
防衛出動がかかっている有事になれば、「道路の占有地内だから一般道ではないと考えて適応除外にするのではないか?」とか、「警察と連携して自衛隊が通るときには一斉に青信号にするのでは?」といった解釈は一般人の間に多数存在するものの、具体的な法令の定めがないのでその場でどうにかやってしまうしかないのだろうと推測するしかないのです。今もそんな状態のまま、制度を決めきれてないのに話は打ち止めになっているのです。自衛官は公務員ですから「法令を守る大前提で動きます」と答えるのは当然でそうなると悠々と法定速度外で突っ走る敵を法定速度でゆっくり追いかける自衛隊という笑えないギャグが起こちゃいます。
せめて緊急車両扱いの特例を有事の場合に限り自衛隊車両に許可すると明記したら現場は混乱しないのにと思います。出たとこ勝負で動いて後から違法とされ、逮捕者や処罰対象者が出たりしたら大変です。また、それによって戦況も不利になるかもしれません。たかだが赤信号ですが、国際法はともかくとしても、日本の道交法を侵略者やテロリストが守るとは思えず、細かく法令に従い法定速度で走行し赤信号で止まる自衛隊と比べればどちらが有利かは問うまでもありません。最初から自衛隊に重い足かせを付けての戦いになってしまうわけですよね。「オーマイガー!」です。
東日本大震災の時にも法定速度を遵守して被災地に向かう自衛隊車両が目撃されたそうです。どんな時でも法令を守るという事が果たしていいのかと聞かれると「謎」です。でも、法律は守らないといけません。法律をまもらなかったら、自衛隊嫌いのメディアや活動家のみなさんにつるし上げられてしまいます。現状では仕方ないのです。
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おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot
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