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自衛官が戦場で負傷をしたら保険はいくら下りるの?

「自衛隊ができない30のこと 18」
自衛隊

※陸上自衛隊HPより

 終戦後から冷戦時代を通して強大な米国の核の傘の下にいた日本。日米安保条約に守られた私達は平和で安全な日々を過ごしてきました。我が国の自衛隊も、機雷処理などの危険作業や事故での死傷はあったものの、戦死や戦場で負傷する危険がない時代を過ごしてきました。反面、自衛隊は国連平和維持活動PKFなどの場合ですら、国外に出ることを問題視されてきたのです。  しかし、現在では中国や北朝鮮など周辺諸国の軍事力が強大になり、一方で米国が「世界の警察」の役割を退き、軍事予算を縮小するようになりました。今まで自衛隊が本当に他国の軍隊と戦うことなど想像すらしなかった私達は、否応なしに「これまでどおりの自衛隊で我が国は大丈夫なのか」という現実に直面することになったのです。侵略軍が日本の領海に深く入り込み離島や我が国の領土に上陸することや、核搭載のICBMが都市に着弾すること、日本国内で外国のテロリストが爆弾テロを起こしたり、武装難民が上陸し住民を人質にとり立てこもるような事態も現実的に想定されるようになりました。北朝鮮への攻撃が始まれば在韓邦人を救出する必要も出てくるでしょう。自衛隊が命の危険を顧みず戦わなければならない可能性はどんどん高くなっています。どこから手をつけていいかわからないなどと立ちすくんでいる余裕などないのです。  さて、ここで自衛官や自衛官のご家族、ご友人達がゾッとする話をしなければなりません。なぜそんな話をするのかというと、国会で今すぐにでもこの「戦争時の自衛官への保障の問題」を議論してほしいからです。なぜって、自衛官が後顧の憂いなく存分に戦えるような環境ではないからです。  長く平和を享受してきたために、戦争(有事・紛争時)の出動で自衛官が死傷することを想定した保障制度を国が作っていないのです。「戦争時には自衛官が個人で入っている民間保険は下りない」。そのことが考慮されていないのが重大な問題点です。  平時の怪我や事故死の場合、自衛官のご家族が民間の保険に入っていれば、その保険金が支払われます。でも、戦場に行くような場合、民間保険の多くは戦時補償を適応外にしています。つまり、有事対応には保険金が支払われないのです。  一応、国には戦争時に死傷した時に支払われる「賞恤金」という制度はあることはあるのですが、これが過去の記録をみると怪我ではほとんど支払われていないのです。賞恤金とは「特別に命がけで頑張った人」に支払われるお金であり、国が特別に功労があったと認めないと払われない制度です。そのため、死亡時に支払われた記録は一定数ありますが、死亡ではなく怪我をして障害を負った自衛官にはほとんど支払われていません。国会の記録では賞恤金が払われたケースはたった一件、空挺降下中の事故の場合のみでした。  戦時の「指が飛んだ、四肢が折れた、失明した」などのその後長く生活に支障が出るような障害でも、これまでの賞恤金支払い状況ではお金が払われない可能性が大です。しかし、これを問題視して国会が「死亡ではなく、障害でも賞恤金が支払われるようにしよう」と決めて予算を付ければ、制度は変えられます。だから、今、この話をしているのです。  怪我をしても保険金は下りず、賞恤金ももらえないとしたら、家族のある人は安心して戦場に行けませんよね。怪我をしても十分な生活資金があって家族も困らないならともかく、ご家族だって「お父ちゃんが怪我でもしたら私たちどうするの? 保険も下りないんでしょ? 生活できないよ」となって必死で止めませんか?
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「公務災害」という制度があるけれど…
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