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なにがあっても「防衛費は増やさない」――潜水艦隊が実員のいない幽霊艦隊になる日

「自衛隊ができない30のこと 17」
自衛隊

※写真は陸上自衛隊HPより

 特別国会が始まりました。毎年、秋には各省の概算要求が出そろいます。  我が国では予算は国会で決めると憲法で定められています。自衛隊も行政組織ですから例外ではありません。決められた予算の中で新しい装備品を買い、隊員への給料を払い、災害救助やミサイル防衛を行ったりしているわけです。つまり、自衛隊の行動は国会の予算審議で決まるということです。 「国会議員に言っても自衛隊は変わらない」という人がいますが、自衛隊の予算を決めるのは国会議員です。国会議員しか自衛隊の状況を変えられる人はいません。  防衛予算というと、我が国を狙う敵に対し、ありとあらゆる強い兵器を使って徹底的に攻撃をするイメージがありますね。たとえば、さる11月5日、横田基地でトランプ大統領は在日米軍に向けて「戦う必要がある際には、相手を圧倒し、常に勝利するために必要な装備と要員、資金を持つ」と演説しました。これは敵を排除できる予算を投入するという強い意志の表れです。  そもそも、船も戦車も飛行機も、燃料や弾薬が十分になければ戦いたくても戦えません。たとえば、ミサイル防衛の場合。迎撃ミサイルが全弾命中すると仮定しても、撃ち落とせる弾道ミサイルはこちらのミサイルの数だけです。つまり、予算が乏しければ乏しいほど、敵の攻撃を防げる率は低くなり、稼げる時間も短くなるのです。  どこの国も無限に予算があるわけではないですが、日本の自衛隊予算は他の行政庁と同じ扱いです。つまり防衛省も合理化、予算削減目標があります。その「削減ありき」の方針の下では、「我が国の領土領海を守ることができるかできないか」ということは問題にはなりません。他の省庁と同様に自衛隊に期待されるのは、「去年の予算よりも安い予算で無事に1年を乗り切ること」です。だから、様々な笑えない話が出てきます。  これまでに、「予算がないがゆえに自衛隊員が耐え難きを耐えている」実状をたくさんご紹介してきました。その一番の原因は、我が国の防衛予算の決め方にあります。 「国防のためにいくらほしいのか言いなさい」という「積み上げて合計を出す」システムではなく、「前年度より減らして概算請求を持って来なさい」と言われて予算請求をするのです。この理屈では、北朝鮮の核ミサイルが我が国の全土に降り注ぐ恐怖といったような軍事的脅威などまったく影響しません。まず削減ありきの考え方なのです。  前年度より大きな額の予算を請求すれば、その段階で差し戻しです。防衛省の担当官も、財務省を相手に周辺事態が緊迫していること、充分な人や燃料や弾薬や装備品がないと対処できないことをさんざん説明し、たくさんの場面で戦ってきましたが、何を言っても門前払いなのです。防衛省(自衛隊)は財務省には勝てません。ゆえに、どんなに必要でも、どうやっても足らないとわかっていても、少ない予算規模に甘んじなくてはいけなかったのです。
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「自分たちの努力でどうにかなるもの」から減らしていく
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