蝶野正洋+nWo×新日本プロレス=不滅の少年漫画的感性――フミ斎藤のプロレス読本#159[新日本プロレス199X編04]
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
コスチュームは全身黒ずくめで、毎週毎週決まった時間にテレビの画面に登場しては反則ばっかりやってる“なまずヒゲ”のビッグガイ。
黒いサングラスをかけて子分どもを何人も引き連れて歩いているような大男は“悪者”に決まってる。蝶野正洋は、少年漫画に出てくる不良グループ、あるいは秘密結社のボスのようなプロレスラーである。
もちろん、プロレスは架空=フィクションの冒険活劇ではなくて、冒険活劇みたいなテイストの現実のおはなし。黒装束の大悪役は、蝶野がクリエイトし、蝶野自身が演じている実在のキャラクターということになる。
長編の少年漫画の登場人物とは、読者の精神的・肉体的な成長のスピードに合わせて進化、モデルチェンジをくり返すものなのだという。
昭和38年生まれの蝶野は、ありとあらゆるコミック雑誌をむさぼり読んでオトナになった世代のジャパニーズだ。だから、荒唐無稽なことを荒唐無稽とはとらえない免疫のようなものを体のなかに蓄えている。
長編ドラマ“蝶野物語”は、新たなるエピソードの舞台をアメリカのメジャーリーグWCWの心臓部に設定した。
黒の軍団nWo(ニー・ワールド・オーダー)は、ハルク・ホーガンの気まぐれから生まれた悪役ユニットである。
nWoがWCWから独立して新団体をつくるという展開は月曜夜のTVショー“マンデー・ナイトロ”のなかのストーリーではあるけれど、WCW副社長のエリック・ビショフを軍団入りさせたことで、ホーガンとnWoのドラマは不思議なリアリティーを持った。
典型的な正義の味方だったホーガンがワルに変身したことで、WCWのリングの風景はブラック一色に塗り替えられた。
ホーガンのその仲間たちがそうであるように、蝶野もまた新日本プロレスのリングを黒っぽくしている悪の主人公である。
少年漫画の世界では“悪”と“悪”は結託することになっている。蝶野とnWoの合体はきっちりとそういうセオリーを踏襲している。
もちろん、既成事実=ノンフィクションをひとつずつ積み重ねていかないと長編ドラマは長編ドラマにはならない。
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